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ACT.11

次の瞬間、噴煙が四方の大地へ滑るように走ったかと思うと、グリフォンは弾丸のようなスピードで暗黒の空へ打ち上がった。

「------ペガサス!」

デューク、オックス、ガイン老人の三人は同時に叫んでいた。グリフォンの体は足の裏からオレンジ色の光りの尾を引いてまっしぐらに暗黒空へ突き進み、そこに不気味に輝く二つの眼の間、人で言えば眉間のあたりへと消えた。デュークをはじめ、全てのフリード星上の人物はオレンジ色の光りの軌跡を追い、暗黒の空を仰ぎ見た。------そして、しばらくの静寂がフリード星を包み込んだ。やがて、ゴゴゴゴゴ‥‥という鈍く低い音があたりに響き出した。音は次第にそのトーンを上げ、耳をつんざくような轟音となった。まるでフリード星の大気全てが激しく震動しているかのようだ。デュークが、そして全ての人が耳を覆って体を伏せた。と、突如、巨大なストロボを焚いたように空が光った。そして、それを合図にするかのように轟音が消え、暗黒の空の間から星が顔を出した。星の数は序々に増えて行く。そう、暗黒の闇が西の空から序々に引いて行くのである。みるみるうちに空一杯に星空が広がった。東の空はぼんやりと明るく光っている。デュークは顔を上げて空を見た。

(‥‥一体、何が起こったのだ‥…?‥…ベム・モンスは‥‥ゴッド・グリフォン…ペガサスは‥‥?)

 

それから一時間が過ぎた。ペガサスはゴッド・グリフォンと共に暗黒の空に吸い込まれたまま帰っては来なかった。フリード星の大地は何事もなかったかのように平静をとりもどしていた。ベム・モンスはゴッド・グリフォンの猛威に退散したのか?一瞬、暗黒の空に輝いた光は何だったのか?そして、ペガサスの行先は‥…?------すべてが謎につつまれたまま事件は終った。デューク、マリア、オックス、エリーナ、ガイン老人、ドク一家などを先頭に、フリード星人達は王宮から少し離れた台地に集合した。東の空は朝焼けで赤く染まっていた。地平線から半分程上り、ダーク・グリーンの雲間から覗く太陽は異様な程に赤く見えた。そのほとんど水平に地上を照らし出す光は、デュークをはじめ群衆の姿をも真赤に染め上げている。彼等の前には一本の十字架が立てられていた。デュークが一歩、前へ出る。

「‥‥ペガサス‥‥どうやら、フリード星は君に助けられたようだね‥‥」

集合した人の全てはデュークの言葉にうつむいた。

「‥‥僕はこの試練の戦いを忘れはしない。…君の遺言通り、僕は僕の一生をかけて君が命をすててまで守ってくれたこのフリード星を再建するつもりだよ‥‥だから‥‥いつまでもここで見守っていてくれ‥‥。」

エリーナの頬に涙が一筋光った。

「全員、ペガサスに黙祷ーっ!」

デュークの声が、朝焼けの空に幾重にもこだました。

 

(完)