パーソナルツール

36

ACT.10

レールが伸びている天井の一角がグーンと音をたてて左右にスライドして開いた。そしてその向こう側、王宮の北側の一角も同時に口を開け、レールの先が伸びて地上に露出した。

「‥…レッド・ゾーン!」

ペガサスが叫んだ。

「行けっ!」

「Go!」

ペガサスは発進レバーを引いた。ロケット・ノズルが青白い炎と煙を噴き、かたつむりは一気に夜空へ舞い踊った。

 

倒れたダイザーの胸部をドイドイのムチのような左腕が襲った。反重力ストームを放射するプレートにヒビが走る。続けてドイドイの右手の鋭いツメが腹部を押そう。宇宙合金グレンの装甲は破られ、ツメが腹部に喰い込む。内部のメカがスパークして火花をチラシ、オイルが吹き出す。さらにドイドイはその爪の先を放電させた。ダイザーの体内を、デュークの全身を高圧電流が駆け巡る。

「------!」

デュークは絶叫した。しかし言葉にはならない。全身の力が抜けて行く。彼は操縦桿に手をかけたまま、ぐったりと前に倒れた。意識はあった。必死に体を起こそうとする。しかし、彼の体は言う事を聞かない。操縦桿を握りしめる事さえできない。

(------殺られる------!)

彼は心の中でそう思った。と、そのとき、三体の円盤獣はダイザーを攻撃する手を留め、一斉に後方を振り返った。

(‥…どうしたんだ?)

彼は不思議に思い、円盤獣を見上げた。円盤獣達は南の空の一点を見つめている。彼も南の空に目を向けた。と、その南の星空の中で何かが一瞬キラッと輝いた。それは猛烈な速度でこっちへ接近して来る。三体の円盤獣はその物体に対して身構える。

(…なんだ?)

デュークがそう思った次の瞬間、その物体は円盤獣達をかすめ、ダイザーの目の前を一瞬のうちにすり抜けた。

”かたつむり”は円盤獣達とダイザーの間を通過した。ペガサスのヘルメットのヘッドホンから老人の声が響く。

「ペガサス!反応はあったか?」

「あった!‥…でも、通り過ぎちまった!」

ペガサスが答える。

「よし‥‥速度を落として反転しろ。反転したら素早くセンサーを同調させるんじゃ。」