06
大気圏に入ってからの天候はひどいもので、風速40メートルを優に越す風邪が吹き荒れる中、磁気異常の影響でレーダーも使用できない上、地上に接近するにつれ砂ボコリで視界も悪く、フリードの王宮の跡を発見する事は困難を極めた。デュークは記憶だけを頼りにグレンダイザーを誘導し、この廃墟に着陸したのだった。
「正直言ってここがどのあたりかよく分からん。だが明らかにここは街だった所だ。生き残った人がいる可能性はある。フリード王宮もそう遠くはないはずだ。しかし、この暗さから見てもうじき夜だ。これからすぐに探しに出かけるのは危険だから、とりあえず今夜はグレンダイザーの中で休んで、捜索は明日からにしよう。なあに、先は長いんだ。」
「そうね」
「よし、それじゃマリア‥‥」
「え、何?」
「セッシャは少々復がへった。食事の用意をしてはくれぬか?」
デュークはマリアを元気づけようとおどけて見せた。
「ははーっ、フリード大王さまーっ!」
「あはは、こいつう!」
二人はそんな冗談を交しながらグレンダイザーに戻った。
夜になると空は晴れ、地震もおさまった。風もなくなり、幾千もの星々が夜空を埋め尽くした。数時間前の殺伐とした雰囲気とは打って変って穏やかな夜だった。食事を終えた二人はグレンダイザーを降り、瓦礫の上に腰かけて星空を見上げていた。
「なあ、マリア‥‥フリード星に生き残った人はどのくらいいるんだろうなあ。」
「ウン、そうね〜〜‥‥」
「俺はな、ベガ星人の生残者もこのフリード星に受け入れようと思って居るんだ。」
「えっ!?」
「ベガ星人の人達も結局はベガ大王の野望の犠牲になったんだ。今頃は帰る星を失って宇宙をさ迷っているんじゃないかと思うんだ。」
「ええ、…そうね、私もその意見に賛成だわ。」
「そうか、ありがとう。」
最初はあの悪魔のようなベガ星人を受け入れると聞いて、いささかびっくりしたマリアだったが兄の寛大な考えに素直に同意した。
「しかし、フリード星再建まで何年かかるか分からんぞ。」
「カクゴしてるわ。」
「よし、それじゃ今夜はもう休もう。明日は早いぞ。」
「ええ。」
二人は腰を上げ、グレンダイザーに戻った。だがデュークは今日、宇宙で遭遇した謎の飛行物体の事を考えると、不安にならざるを得なかった。
Act.3 誘拐
翌日、デュークは早く目を覚ました。フリード星は地球の約1.3倍ほどの赤道半径を有し、自転周期は地球時間で約30時間程である。当然、夜が占める時間も地球より多い。