人工地震の話

|2011/3/24(木曜日)-22:26| カテゴリー: 雑記
| コメントする

 今回の大地震の原因について、人工地震だといった意味不明な説を振りまいて喜んでる人が居るようですが、荒唐無稽な話です。人工地震の実験を知らないから言える妄言でしょう。2ちゃんねるを信じてデマを振りまくのは、選別眼の無さのあらわれに過ぎません(←もちろん、某サイトを想定してます、ここ重要)。

 人工地震の実験では、ダイナマイトを使って爆発させ、振動を起こします。その振動が広い範囲にわたってどう伝わるかを動じた点計測します。実験の目的は、地面の中がどうなっているかを知ることにあります。

 この実験によって本物の地震が起きて被害が出るのでは、といった、あらぬ誤解を受けることもあるようですが、実験が原因で本物の地震が起きたことはありません。本物の地震にくらべると、爆発で起きる振動というのは、とってもしょぼいのです。でも、測定器の感度がいいから、振動を拾うことができるようです。

 爆破実験ですから、都会の真ん中ではできません。人が来ない辺鄙な田舎が選ばれることになります。みんなで一斉に測定しますから、研究者はチームを組んで連絡を取り合い、山の中に散らばって行ったりします。風光明媚なところが測定場所になると、ほとんどハイキング気分です(爆)。

 この手の実験をする人は、フィールドワーク、つまり野山に行って現地を見るのが大好きです。ですから、測定する人が足りなくなることはないそうです。ところが、データを持ち寄ってデスクワークをすることになると、みんな敬遠してあんまりやりたがらなかったりするそうです。まあ、論文にならないと成果が出ないので、しぶしぶ、誰かが引き受けることにはなりますが。

 今のところ、地球人類は、人工的に地震を起こさせる技術を手にしていません。これはむしろ、日本にとって残念なことです。
 日本列島は、プレート境界の上やすぐそばにあります。100年単位で見た場合、プレートの歪みはいつかかならずエネルギーを解放します。溜まったエネルギーが一度に解放されると、今回のような大きな被害になります。もし、人工地震を起こさせることができれば、たとえば10年に一度といった頻度で小さめの地震を起こすことで、プレートの歪みを定期的に解消し、大きなエネルギーが溜まらないようにできるはずです。「震度6とか7の地震+大津波1回」よりも、「震度5くらい+小さな津波」が10回に分けて来てくれた方が、被害はずっと少なくなるはずです。
 残念ながらそんな便利な技術はありませんし、自然にまかせるしかなく、自然のやることは人間の想定を上回るのが常でもありまして、大変なことになってしまいました。遠い未来であっても、地震をコントロールできる日が来ることを望みたいと思います。プレートやマントルの動きを止めるよりは、まだ実現可能性のある技術だと思いますので。

 陰謀論がばかげているのは、地球科学の専門家の間でも存在しない技術を前提にしていることです。また、仮にそんな技術があったとしても、やった結果大被害をもたらしたら、「以後地震の研究はまかりならん」ということになって、研究費はストップ、科学者は飯の食い上げです。
 原発も被害を拡大してますが、あっちは、一応は普段から電気を供給して役に立っていますし、その結果得られる収益がありますから、御用学者を抱えることも可能です。しかし地球科学は違います。そもそも経常的な収入がありません。普段から大して役立ってないのに被害だけ発生させたりしたら、干されるどころじゃすみません。科学者だって給料は欲しいですから、そんなやばいことに手出ししないのはわかりきった話です。

 もっとSF的発想をして、地震兵器の実験だだだっ!ということにしようとしても、やっぱり無理があります。普通、自国民を犠牲にして兵器のテストはしません。核兵器の開発だって、自国民の住む街の上で核実験をしたケースは、世界中どこを探してもなかったわけで。地震計を丁寧に設置すれば結果を出せるのに、現実の被害を出すなどばかげていますね。

 まあ、地震が人工のものだといった主張をするのは自由です。言論と表現は自由ですし、自らバカを晒すのも権利(愚行権かな)の一種ですので。

 なお、話が人工地震+陰謀論までぶっ飛べば、それに同調するのはもともとアレな人で、普通の人はまずひっかかりません。しかし、「原発がどんなものか知ってほしい」(著者とされる人物の没後に作られた怪文書)は、それなりに本当っぽく見えるからひっかかる人が出てきそうです。そんなわけで、荒唐無稽な話ほど、笑えるだけで実害は無かったりします。



Recently:


Comments


Name

Email

サイト

XHTML: 次のタグが使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

コメント

*