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9.許されざる怒りを越えて

ストーリー紹介

 コマンダーミネオが円盤獣ジルジルでスカルムーン基地にやってきた。ガンダル司令は,「グレンダイザーへ組み付き,そのまま自爆してグレンダイザーごとデューク・フリードを倒せ」と命じた。驚くコマンダーミネオ。レディーガンダルは,この作戦に成功すればルビー星の安全は永遠に保証されると言う。ガンダル司令は,誓いと決意の証として短剣を授け,生きて帰るなと出撃を命じるのだった。

 宇宙科学研究所では,赤いままの月を前にして宇門所長が考え込んでいる。ベガ星についてもっと詳しいことがわからないのかと甲児は大介に訊くが,大介は答えない。そこで甲児は,いつも防戦のみでは埒があかないのでこちらからベガ星連合軍に乗り込むことをかんがえようと提案したが,所長は彼我の戦力差を理由に却下した。そして,敵を知ることが大事だと諭すのだった。その時,山田所員がマザーバーンをキャッチしたと報告する。大介は観測室から走り出ていった。

 大介と甲児は研究所のヘリポートから,赤い月を眺めていた。「ぼくが地球へ来たために,関係ない人々がとばっちりを受けてしまうことは,とても耐えられないことだ」と大介は悩んでいる。甲児が,現実に迫ってくるマザーバーンをどうするのかと訊くと,大介は,親衛隊のロボットなら操縦者がいるので,殺さず捕虜にして敵の情報を得ようと言うのだった。

 マザーバーンでは,コマンダーミネオが発進準備を完了していた。ブラッキーは,デュークフリードを一番誘い出しやすいところを攻撃する作戦を考え,先にミニフォーを出撃させた。ミニフォーは,ひかる,吾郎,番太が通っている八ケ岳学園を攻撃した。甲児がまずTFOで迎撃した。大介もデュークフリードに変身して,続いて出撃した。そのタイミングを見計らって,ブラッキーはミネオを出撃させた。グレンダイザーはスピンソーサーとスピンドリルで攻撃するが,両方とも躱されてしまった。人型に変形したジルジルは,メルトシャワーの攻撃も躱してグレンダイザーに下からしがみつく。デュークはグレンダイザーを揺さぶって振り落とそうとするがうまく行かず,ジルジルにしがみつかれたまま上昇を続けた。ブラッキーは自爆命令を出して自分は大気圏外へ逃げた。ジルジルの自爆を察知したデュークは磁力波電波を発射し,自爆用の時限装置を狂わせた。スペイザーからダイザーを分離させて円盤獣を振り落とし,円盤獣の攻撃を躱しながら反重力ストームで攻撃,円盤獣は墜落する。

 円盤獣の側にグレンダイザーを着陸させて,デュークは操縦席に近づいた。気を失っていたふりをしていたミネオは,短剣を抜いてデュークに襲いかかる。そこへ甲児のTFOが着陸してきた。デュークは,甲児をよびよせるが,ミネオがデュークを刺そうとしたのを目撃し,甲児はミネオに当て身を食らわせて気絶させた。

 ブラッキーはミネオとの交信が途絶えていらいらしている。その頃,宇門源蔵の家に運び込まれたミネオは意識を取り戻した。傷ついているものを助けるのが地球の流儀だ,と甲児は言う。宇門も様子を見にやってきた。ミネオは「殺すなら早く殺せ」というが,大介は,ベガ星は死ぬことを教えるが地球では生きることを教えると説得した。甲児はひかるの服をミネオに届けた。牧場家全員と番太,甲児,宇門,大介は応接室で待つのだった。着替えてやってきたミネオの美しさに一同は驚き,牧場家あげて歓迎することになった。

 ブラッキーは,相変わらずミネオと連絡がとれないで,いらいらしている。一方牧場家では歓迎パーティーをしていた。甲児,団兵衛,大介,ひかる,番太,吾郎はゴーゴーを踊って,ミネオを歓迎した。しかし,ミネオは,ブラッキーの命令が頭から離れず,自分の戦果に故郷ルビー星の未来がかかっていることを思うと,沈み込んでしまい,途中で部屋を飛び出していった。大介は後を追った。ミネオは墜落した円盤獣にたどりつき,ブラッキーの呼び出しに答えた。ブラッキーは使命を忘れるなと念を押した。後を追ってきた大介とミネオは向かい合い,命令通りにミネオは短剣を抜くが,デュークの暮らし向きを知ってしまった後ではどうしても殺すことができなかった。

 ミネオは再度戦闘服に着替え,デュークを襲う。服のまま寝ていた大介に,ためらった後短剣を降り下ろすが,寸前に目を覚ました大介はうまく逃れた。ミネオは,もう私を追わないでと言い,ジープで円盤獣へと急ぐ。大介はバギーで追うが,円盤獣は飛び去った後だ。大介は,再びデュークとなってグレンダイザーで後を追った。飛び去る円盤獣はブラッキーに見つかってしまう。ミネオは見逃して欲しいと言うが,ブラッキーは許さず,脱走者として処刑を命じた。マザーバーンの攻撃が命中した円盤獣は墜落,大破した。デュークはマザーバーンを攻撃する。出撃してきたミニフォーをメルトシャワーで全滅させたが,マザーバーンには逃げられた。ミネオは大介に救出されるが,「ルビー星の事を頼む」と言い残してミネオは息を引き取るのだった。

 

架空座談会

宇門「今回の作戦は,第2話と似たものだったね。第2話では操縦者のいない円盤獣を使って失敗したから,今度はコマンダーに操縦させることにしたんだろうね」
甲児「『親衛隊長からもそのように言われて参りました』ってミネオが言ってるってことは,ミネオは元親衛隊員だったのかもしれないぜ」
大介「それが,着任するなり死んでこいと命令されたわけだからねぇ。迷ったり悩んだりするのは無理もない」
宇門「戦況を考えると,ベガ星連合軍は特攻するほど追いつめられちゃいないからね。使い捨てにされると知ったら志気も下がるだろう」
甲児「ところで俺が,『大介さん,ベガ星についてもっと詳しいことはわかんないんですか?』って聴いても黙ってるけど,本当に知らないのかい?」
大介「甲児君,ベガ星の本拠地は,フリード星と同じアンドロメダ星雲にあるんだよ。せいぜい月までしか有人宇宙飛行できない地球の技術では,知ったところでどうにもならないじゃないか」
宇門「『このままじゃあ,いつもベガ星連合軍の攻撃を食い止めるだけで……ねえ先生,いっそこっちからベガ星へ乗り込んでいくことを考えましょう』ってのは,じつに甲児君らしいがね」
大介「でも父さん,『まず,敵を知ることだ』『それが全てを平和に解決するただ一つの道だ』ってのは,はっきり言って甘すぎますよ。フリード星人はベガ星を知ってたけど,全滅させられた。敵を知るのは大事かもしれませんけどねぇ,平和に解決するのは無理なんじゃないですか」
宇門「……」
甲児「そりゃそうと,大介さんの言うようにコマンダーを捕虜にしたけど,ベガ星の情報は得られなかったよな」
大介「もうちょっと親しくなってからいろいろ訊いてみようと思ってたんだけどなあ」
宇門「まあ,歓迎パーティーなど開いてしまってはなあ……。捕まえてすぐ拷問にでもかければ別だろうが,我々はベガ星連合軍とは違うから,そんなこともできないし」
大介「まあ,以前のベガ星近辺の状況は知ってるけど,奴らが地球方面にどれだけの力をさいているかってことは,依然はっきりしませんね」
甲児「でも大介さん,ミネオに寝込みを襲われて,よく躱したよなあ」
大介「甲児君,その表現は誤解を招くよ。まあ,フリード星人は,地球人より敏感なところもあるのでね」
宇門「ところで大介,お前またバギーバイクを放り出して……」
大介「ああーっすみません父さん……でも今回は後で僕が回収しましたよ」
宇門「そうじゃなくてだ,回収した後の整備の手間だってばかにならんだろうが。まったく,お前は飛び降りないと変身できないのかね」
甲児「そういや,自分で飛び上がってるか飛び降りてるかどっちかですよね,大介さん」
大介「そういうわけでは……でも訓練ではいつもそうしていたので空中で変身するのが何となくやりやすくって」
甲児「仮面ライダーみたいに,まず落下のときの風でベルトを回して……ってわけじゃないんだろ」
大介「ええ……」
宇門「いっそ,バギーを水陸両用にするべきか,それとも……まあいい,儂が解決策を考えるとするか」

SF的考証:スピンソーサーの発射

 第8話までとオープニングでのスピンソーサーの発射は,図1に示すように,ソーサーの上半分が分離するものだ。ところが,第9話からは,図2のように,ソーサー全体が離れて飛ぶことが多い。これについて考えてみよう。

 もともと,スピンソーサーは(ドリルソーサーも)図1と図2の両方の方法で発射できるものだったのだろう。ただし,飛び方が異なる。図1では,ソーサー上半分が分離して飛び出した後で上下面に刃が展開,回転しながら標的に向かう。図2では,まずソーサー上下に刃が展開し,飛び出す前に回転が始まっている。回転速度は,図1の方が遅い。飛んでいく質量は図2の方が約2倍と推定できる。武器というものは,重量があった方が威力が高い。刃の回転速度とソーサーの重量の両方の面から,図2の方が攻撃力が高いと思われる。

 ただし,ソーサーもフィールド推進で飛んでいると考えられるので,質量がちがうことによる影響は,標的にぶつかったときの威力が変わるというだけにはとどまらない。重力場や慣性を制御するということは,我々の科学から見た場合,運動量と質量を相互に変えたりといったズルをしているように見えるだろう。つまり,質量の大きいものを飛ばした方が,運動量を変える自由度が高まり,結果としてトリッキーな機動ができることになるからだ。ソーサーを丸ごと飛ばすことで,より複雑な機動で標的に命中させることができるようになるという利点があるのではないだろうか。

 別の利用法としては,図2の方式でスペイザーから離れない状態で上下に刃を展開して高速回転させながら,のこぎりとして使うというものがある(第10話)。敵の触手に絡みつかれたときに,これで切断していた。

図1図2
fig1.jpg fig2.jpg

 これでうまく説明がついたと思ったのだが,第11話で困ったことが・・・図2の方式で飛ばしているのに戻ってくるときは図1の方式になっている。シーンを見てるとほとんど連続してるから悩ましい。なんとか説明をつけるとしたら,実はアニメのシーンにはちょっとタイムラグがあって,命中したときに上下に分離して,下半分が先に戻っていたということじゃないかと。ややこしい回収のしかたをして何の意味があるのかが謎なんだけど……。