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3.危機せまる白樺牧場

ストーリー紹介

 牧場祭の朝だというのに,ベガ星連合軍が街を攻撃する夢を見てデュークは目覚める。牧場祭のときに奴らが攻めてこなければ良いが……と心配するデュークに,もう少し気を楽にしなさいという宇門。その一方で,甲児と団兵衛はTFOの操縦をめぐって掛け合いをやっている。

 ブラッキーは地球攻撃の準備を進める。ガンダルの指示した目的は「デュークフリードの誘い出し」で,牧場を徹底的に攻撃せよと命令した。

 荒野番太が馬にのって登場。甲児のTFOに驚いて落馬する。甲児が「四色旗」とあだ名をつけたのもこの回。近隣の人たちも集まって牧場祭の準備は順調に進んだ。宇門源蔵も特殊バスで白樺牧場に向かう。円盤が近づいているので警戒しつつ,牧場祭が続く。甲児は番太とケンカしてみたり踊ったりしている。大介は少し沈んでおり,心ここにあらずという状態である。ひかるが誘っても気が乗らない様子だ。番太が強引に山田所員を連れ出したおかげで,円盤接近の連絡が遅れてしまった。

 白樺牧場はミニフォーに攻撃され炎上するが,デュークが出てこないので続いて円盤獣バルバルが出撃する。宇門源蔵は林所員の車で研究所に戻るが,途中,ミニフォーに攻撃される。甲児のTFOがミニフォーを撃墜したので,無事に研究所に戻ることができたが,甲児はミニフォーの攻撃を受けて墜落し,気を失ってしまう。大介は,消火活動を牧場祭参加者に任せ,デュークフリードとなって出撃する。そのまま発進するとグレンダイザーの基地がわかってしまうので,宇門所長の指示で緑色のアンチレーダーミストを使い,敵のレーダーを撹乱した。

 グレンダイザーはスピンソーサーで攻撃したが防御され,スピンドリルで円盤獣の翼を破壊,スペースサンダーでダメージを与えた後,体当たりでこれを撃破する。マザーバーンは引き上げる。

 甲児は,大介に揺り起こされて気がつく。牧場の火事も大きな被害を出さずに消火された。団兵衛は,宇宙人に牧場祭の招待状を出し忘れたから攻撃されたと思い込んでおり,みんなに呆れられていた。

架空座談会(於:宇宙科学研究所会議室)

宇門「大介,前の日は遅かったのかね。朝起きたときには服のままだし,毛布もかけずに寝ていたようだね」
大介「はあ。収穫祭直前ともなりますと,やり残した仕事も多くて。特に今年はベガ星の奴らに邪魔されてしまって仕事が遅れがちなんですよ」
宇門「『この白樺牧場は平和のシンボルだ。決して荒らさせてはならない』って言ってるけどね,シンボルじゃなくてお前の家だし職場だろう?」
大介「そりゃそうですけどね……だけど,父さんだって『宇宙からくるもの全てがベガ星のものだとは言えんからねえ』って,こりゃ気休めもいいところだ。ベガ星以外で来たのは僕だけじゃないですか」
宇門「困ったもんだねぇ。宇宙にはもっといろんな種族が居ることを期待して研究所を作って観測してるんだが,遭難か亡命か攻撃しかこないってのは。甲児くんじゃないが,もっと普通に外交できないものかと思うね」
大介「(困ってる理由はソレかい!)」
甲児「しかし,山田さんの運転技術ってのもすごいよな。酔っ払い運転でミニフォーの攻撃をかわし切っただろ」
宇門「私も山田君の運転には正直驚いたよ。持ち場を離れたことで叱ったりもしたが,番太君に無理矢理連れてこられたようだし,あんまりきつく言わない方が良かったかな。ただ,酔っぱらっていたから普段より激しくハンドルをきって,それでミニフォーの攻撃が当たりにくかったのかもしれんな」
大介「父さんがあの運転で目を回さなくて良かったですよ。迅速な指揮がとれず,アンチレーダーミストの噴射が遅れたら,グレンダイザー発進の現場がベガ星にばれてしまうところだった」
宇門「これでも若い頃は宇宙飛行士の訓練だってこなしたわけだからねぇ。見くびってもらっちゃ困るよ」
甲児「そりゃそうと,大介さん,あんた一杯ひっかけてから出撃したよな。俺なんか,円盤が来るってわかってたからジュースでがまんしたんだぜ。酒のんで上空に上がったらめちゃくちゃに酔いが回るからよ」※1
宇門「そういえば大介はビールだったな。その上円盤獣につかまえられて,スペイザースピン・ゴーって,名前の通り目の回りそうな大技を……」
大介「ジョッキ一杯だけです(赤面)。それに,スペイザースピンやってるときだって僕は平気でしたよ。ほら,ここのシーンみてくださいよ。僕だってベガ星の攻撃がどういう状況かってこと位,ちゃんと考えてますよ」
甲児「フリード星人って頑丈にできてるとは思ってたけどよ,三半規管まで頑丈なんだな」
宇門「しかし,戦い方が何だか雑だったねぇ,最後が体当たりだったし,円盤獣を倒した後は息が上がってたようだね」
大介「……」
宇門「ま,道交法の適用が無いとはいえ,酔っ払い運転はいかんな」
甲児「ははは……。確かに。車でも,酔っぱらって道と間違えて線路走ったなんてのがあったよなあ」
宇門「グレンダイザーでやったらシャレにならんぞ。地面に激突して大穴を空けるか,飛んでいく方向を間違えて大気圏を脱出するか」
甲児「車なら操作を間違えてもクラクション鳴らしたりワイパーが動いたりで済むけど,スペースサンダーが出たりスピンソーサーが飛びまくったりしそうだな」
宇門 「おや?大介,どうしたね,急に無口になって……」
甲児「大介さん,まあ気を落とすなよ」(と,大介の背中をぱんぱんと叩く)
甲児「ベガ星の奴らやっつけちまえば心置きなく酒が飲めるってもんだぜ」
 別に酒が飲みたいわけじゃない,と思ったのだが,これ以上何かいうともっとネタにされそうで,黙るしかない大介であった……。

※1 元ネタは「ファントム無頼」(新谷かおる)

SF的考証:デュークの戦闘服

 アニメの設定資料集などを見ても,デュークが戦闘服に変わるところは,単に「変身」とだけ書かれている。また,本編中では戦闘服の役割について,特に述べられていない。材料が少ないのだが,グレンダイザーの世界に合うように考えてみる。

 変身ポーズの描かれ方は何通りかあって,光とともに全身が完全な戦闘服に変わるものと,徐々に変わっていくものがある。徐々に変わるものは,一度全身が赤い色になってから,黒い部分と赤い部分がまず分かれ,そのあと,ベルトや胸部の青色の部分とヘルメットの後ろ側ができ,胸部の模様が決まるのと同時にヘルメットの前部が形成されるというものである。ここでは,より詳しく描かれている方,つまり段階的に戦闘服が形成される方が基本だと考えることにする。

 ヘルメットのフェイスガードは可動である(第2話など)。ヘルメット全体は着脱可能である(第4話)。戦闘服の赤色部分の下には,特にシャツなどを着ているわけではなく,敗れるとそのまま腕が見えるという描写がなされている(第71話)。また,普段の服にほとんど瞬時に戻ることができるのは(第27話),宇宙円盤大戦争でスターカーを引き抜くと服がちぎれ飛んだ下から戦闘服姿が出て来る変身方式とは対照的である。戦闘服の黒色の部分は厚みも強度もあるようだ。第4話でロボット犬を腕で倒すときは,腕の黒色の部分を使っていたので,プロテクターとしての機能をある程度備えているのだろう。また,胸部は元のデュークの体格と比べて厚くなっている。

 「服を着替えるタイプの変身」のメカニズムについては,同人誌等で,キューティーハニーに出てきた「空中元素固定装置」でやっているのではないかという指摘が既になされており,ハニーの世界とクロスする描写がなされた作品もあるようだ。しかし,ここでは「元素固定&変換機能と重力制御機能を多少は備えた自律的に動作するナノマシンの集合体」というものを考えればうまく説明できるのではないかと考えられる。ナノマシンの動力源はグレンダイザーと同じ光量子で,デュークの体の表面に一種の共生のような形でくっついている。こう考えるのは,次のような理由による。

 既に来ていた服が戦闘服の下には存在しないことから,単純に元素固定等で上から戦闘服で被ったという考え方はできない。元の服を別のものに変えて,かつ元の状態を記憶し,戦闘服を作らなければならない。ここまでなら,「ハニー」の「変身」と同じである。が,ハニーが首に付けていたような装置をデュークは身に付けていない。

 変身用道具があるとしたら,候補の筆頭に上がるのは,グレンダイザーのペンダント(緑色の枠に丸くて青い石がはめこまれたもので,グレンダイザーに近づくと光る)だろう。しかし,24話でホワイター少尉からひかるを助けるときに,デュークはペンダントを投げつけている。その後,ペンダントを持たないままいつも通りに戦闘服になってグレンダイザーで出撃している。ペンダントは,出撃から戻ってきたデュークにひかるが手渡している。従って,変身にペンダントは必須ではない。そうなると,他に何か別のアイテムを考えるか,デュークの体そのものに原因をもとめるしかない。デュークは,他に目立った大きさのものを身に付けてはいないので,変身の効果を持っているものは,普通に見たのでは見えないような大きさのものに違いない。ナノマシンという小さいものの集合体を考えるのはこの理由による。

 変身は,まず全身が赤色になるという描写がなされる。デュークと共生しているナノマシンが一斉に活性化したためだろう。その後,デュークの体に沿って,黒色の部分など細かい部分が自律的に作られていく。このとき,元の服の必要のない部分はナノマシンに取り込まれてしまっているのだ。最後にナノマシンは相互に連結して,見たところ普通の服のような形状を作る。ペンダントをしている場合は,胸部の厚くなった部分にうまくはまるように戦闘服ができるのだろう。元に戻るときは,それぞれのナノマシンが元の服の材料を作り出した後,デュークの体表面に隠れてしまえばよい。

 次に,重力制御機能と自律性について考える。

 ひかるや真一少年を助けたときにもデュークは戦闘服に変身している。どちらも,助ける相手が崖から落下したり滝から落下したりする場合であった。落下する相手を受け止めたり,受け止めた後あきらかに落下する軌道を変えて着地している。また,戦闘服で格闘するシーンがいくつかあったが,デュークは高い身体能力をうまく活かして敵の攻撃をかわしている。しかし,いかにデュークの身体能力が高くても,跳躍したあと落下してくるときは,外から力が加わらなければ重心は自由落下するので,落ちてくるところを予測すれば攻撃は確実に当たるはずである。しかし,デュークは攻撃を外すようなトリッキーな運動をしている。これは,スーツ自体がデュークの体の動きに反応して,重力に対して加速・減速の効果をもたらしているということなのだ。体の動きは体表面の筋電を見ればわかるから,その信号をナノマシンで拾って,うまくフィールド推進のミニチュア版のような機能を発揮しているのだろう。ただし,これはそんなに大きな効果ではないし,肝心のデュークが動こうとしなかったら働かないものである。

 変身の時にデュークの体が輝いているのは,戦闘服が作られるときに生じた余分なエネルギーを光として放出しているからである。演出の都合ではありません(笑)。

 また,通路を移動中にデュークの髪が緑色に変わるというのがあったが,あれは,共生しているナノマシンが変身前の調整のため,一時的に普段より活性化するということが起きていたからだと考えられる。