証 2
by Ree
宇宙科学研究所に到着した大介は、バギーを玄関に横付けし、慌てて観測室に向かった。
「父さん、また円盤獣が現れたのですか?」
観測室に駆け込んだ大介は、開口一番、宇門に問いかけた。
観測室では、山田所員、林所員、佐伯所員が慌ただしくデータ収集しており、メインスクリーンには円盤獣とミディフォーの編隊が映し出されていた。その前で難しい顔をして眺めていた宇門源蔵と兜甲児は、大介の声に慌てて振り返った。
「大介、ベガ星連合軍の編隊だ。しかもかなりの数でやってきている」
メインスクリーンの前に立った大介は、その映像に驚いた。円盤獣は一機だが、それを纏っているかのようにミディフォーが群を成していた。
「大気圏突入!」
林は、レーダーシステムを覗き込みながら大声で伝えた。
「父さん、出撃します」
大介は踵を返し、走り出した。
「大介!敵はかなりの数だ。充分注意するんだぞ。決して無茶はするんじゃない。いいか!」
宇門の声に足を止めた大介は、はい。と返事をして再び走り出していった。
「所長、俺も出撃します。あの数、大介さん一人じゃ大変だ!」
甲児も応戦すべくドアに向かって走り出した。
「待ちたまえ!甲児君」
宇門は、慌てて甲児を制した。
その声に甲児は立ち止まり、振り返った。
「君はいつも無茶をしすぎだ。命は一つしか無いんだ。それを考えて行動してくれたまえ。わかったかね?」
宇門は、いつも甲児に冷や冷やされられっぱなしで、いつか大怪我をするのではないかと心配でならなかった。
「わかってますよー、そんなこと。じゃ、行って来ます!」
そう言いながら、甲児は片手をあげて走り去っていった。
「グレンダイザーが発進します!」
グレンダイザーの出撃準備をモニタしていた山田所員は、グレンダイザーのコックピットモニタのスイッチを入れた。
「大介、気を付けるんだぞ!」
宇門は、グレンダイザーのコックピットモニタに向かって大介の無事を祈りながら再度念を押した。
こくんと頷いた大介は、グレンダイザーGO!のかけ声とともにグレンダイザーを発進させ、ベガ星連合軍の編隊に向かって一直線に飛んでいった。
甲児は、TFOに乗り込むべくシラカバ牧場に向かっていた。
キキキィー!
ジープを勢いよく止めた甲児は、運転席からひらりと飛び降り、TFOの格納庫目指して走っていった。
「あら?甲児君、どうしたのー?また円盤がやってきたのー?」
遠くで甲児の姿を見つけたひかるは、大声で呼びかけた。
「おぉ甲児君、また出陣かね。頑張ってくれたまえよー!わしも陰ながら応援しとるぞよ」
団兵衛は、格納庫目指して走っている甲児にエールを送り、甲児は片手をあげながらTFOに乗り込んだ。
程なくして、グレンダイザーはベガ星連合軍の編隊に遭遇した。
「行くぞ!ベガ星連合軍!」
グレンダイザーと対峙したミディフォーは、編隊を変え、戦闘態勢に入った。
「スピンソーサー!」
大介は、グレンダイザーのスピンソーサーで敵の編隊を崩しにかかった。
群を成して襲いかかるミディフォーが、ビーム砲を発射しながら右から左からと襲いかかる。
「スピンドリル!」
大介はスイッチを入れた。
ブシュン!ブシューン!ボワッ!ドゴーン!
数機が爆破された。だが爆破の隙間から、また群を成してミディフォーが襲いかかる。
ビームがグレンダイザーをかすめた。
大介はグレンダイザーを旋回させ、ミディフォーの攻撃を避ける。
後方からミディフォーが数機、ビームを発射した。スペイザーのボディに直撃する。
大介は、グレンダイザーを急上昇させた。ミディフォーが数機、後に続く。上昇したかと思ったら、急降下させて、正面からミディフォーにスペースサンダーをぶち込んだ。
バリバリバリー!ドッバーン!
スペースサンダーをまともに食らったミディフォーが吹っ飛んだ。
ズダダダーン!
ミディフォーの編隊の隙間から、グレンダイザーめがけて円盤獣がビーム砲を発射した。
「ぐわっ!」
円盤獣のビーム砲は、まともにスペイザーの上部に命中し、その衝撃で大介は声をあげた。
「くそっ!」
大介はグレンダイザーを旋回させ、円盤獣の攻撃を避けた。が、避けた先にはミディフォーが数機待ち受けていて、一斉にビーム砲を発射してきた。
避けきれず集中砲火を浴びるグレンダイザーだが、そのままミディフォーに突っ込み、体当たりで爆破し、またも上昇した。
後部にミディフォーが群を成して追いかけてくる。
急旋回し、メルトシャワーを発射。
ジュワジュワジュワー!ボムッ!ドゴーン!
ズババババーン!
またも円盤獣のビームが、グレンダイザーの右上部に命中した。
「うわぁぁぁ!」
ビーム砲の衝撃が大介の体を突き抜けた。
「はぁはぁはぁ……」
大介は、肩で大きく息をしていた。
正面に対峙した円盤獣が変形した。二枚の皿を合わせた様な円盤の形が縦になり、中央に亀裂が入ったかと思ったら顔と尻尾が現れ、トカゲの様な形になった。皿のような円盤部分は両手に握られ、盾となってグレンダイザーの攻撃を尽く跳ね返した。
「スピンソーサー」
大介は、スピンソーサーのスイッチを入れたが、盾に守られ跳ね返された。
円盤獣と対峙している間に、ミディフォーはグレンダイザーの左右後方と、グレンダイザーを取り囲んで一斉放射した。
ビビビビーーッ
大介は堪らず降下したが、円盤獣の尻尾が触手の様に延び、グレンダイザーの胴体にからみついた。
ガツッ!
「うっ!」
急に動きを封じ込められ、大介は前のめりになって胸を強打した。
すかさず円盤獣は、尻尾から強力な高圧電流を放った。それと同時にミディフォーもビーム砲を一斉放射する。
「ぐわぁぁー!」
大介の体を電流が突き抜ける。
「大介!」
観測室で、グレンダイザーのコックピットモニタを凝視していた宇門は、思わず叫んだ!
円盤獣とミディフォーの攻撃は止まず、大介は歯を食いしばり、なんとか円盤獣を振り切ろうとグレンダイザーをパワーアップさせて降下したが、絡みついた尻尾はびくともしない。
ズドーン!ズドーン!
甲児が乗ったTFOが到着し、円盤獣の尻尾の付け根を狙ってミサイルを発射した。
円盤獣は、堪らずグレンダイザーを放し、その弾みにグレンダイザーは急降下した。
「大介さん!大丈夫か?」
大介は、慌ててグレンダイザーの体勢を立て直し、旋回した。
「あぁ甲児君、助かった。すまん」
TFOは急上昇し、群を成しているミディフォーに向かってミサイルを発射した。グレンダイザーも上昇し、回りにあるミディフォーを蹴散らしながら円盤獣に向かって行った。
円盤獣は口からビーム砲を発射したが、グレンダイザーは体勢を傾け、それを交わし、ハンドビームを発射した。
円盤獣は、ハンドビームを手に付いている盾で避けた。
「ダブルクラッシャーパンチ!」
グレンダイザーの両腕が飛び出した。が、やはり盾に跳ね返される。
「くっそ!武器が効かない!」
大介は地上戦に持っていきたいところだが、ミディフォーの数が多すぎてTFOだけでは防ぎきれない。とりあえずミディフォーを撃退することを優先した。
「ミサイル発射!」
TFOは、右へ左へと小さい機体を武器に、ちょこまかと動き回りながらミサイルを発射していた。
TFOの動きに合わせ、グレンダイザーもミディフォーを撃退していく。だが、ものすごい数のミディフォーは、なかなか減らなかった。
「甲児君!危ないっ!」
TFOはミディフォーに回り込まれて集中砲火を浴びた。
その間に割って入るグレンダイザー。がしかし、またも円盤獣の尻尾が延びてきた。
かろうじて巻き付かれるのは逃れたものの、口から吐き出すビーム砲をまともに食らった。
「う・ううっ!」
「くそっ!いったいミディフォーは何機あるんだ。一機ずつ倒したのでは埒があかない。そうだ!」
「甲児君、一斉放射する。下がってくれ!」
「わかった!」
甲児は、そう言うとTFOを急降下させた。が、ミディフォーはTFOの後を追う。グレンダイザーはその間に割って入りTFOを避難させた。
「メルトシャワー!」
グレンダイザーは、メルトシャワーを噴射しながら回転をはじめた。
360度メルトシャワーが飛び散る。グレンダイザーの回りを取り囲んでいたミディフォーが、一気に爆破された。
「はぁはぁ……これで一気に減ったぞ!」
ドゴンッ!
回転を止めた途端、グレンダイザーめがけて円盤獣がビーム砲を発射した。
ビーム砲が、グレンダイザーの尾翼に当たり吹っ飛んだ。
体勢を崩したグレンダイザーは、急降下していく。
「くそっ!よし、地上戦にスイッチだ!シュートイン!」
尾翼を吹き飛ばされたグレンダイザーは、機体を揺らしながらも急降下していった。
「ダイザーGO!」
グレンダイザーがスペイザーと分離して、地上に降り立った。その動きに合わせ円盤獣も地上へと降りた。
「ダブルクラッシャーパンチ!」
円盤獣と対峙したグレンダイザーは、両腕を発射した。が、盾に跳ね返されてしまった。
「スペースサンダー!」
大介はスイッチを入れたが、やはり盾に跳ね返されて円盤獣にダメージを与えられない。
「ミサイル発射!」
TFOが、円盤獣めがけてミサイルを放った。が、やはり盾に跳ね返されてしまう。
「ショルダーブーメラン!」
シューン!カキーン!
「ショルダーブーメランも効かない。くっそ、どうしたら……」
「ミサイル発射!」
甲児は、接近して円盤獣を攻撃する。
「危ないっ!甲児君!」
そう大介が叫ぶや否や、TFOは円盤獣の尻尾でなぎ払われてしまった。
「うわぁぁぁー!」
TFOは、小高い丘の斜面に激突した。
「甲児君!甲児君!」
「うっ、うううっ……」
激突のショックで、前のめりになって頭をぶつけた甲児は、額から血を流していたが、意識はあるようだった。
円盤獣は、TFOにとどめを刺そうと尻尾を振りかざした。
グレンダイザーは、慌ててTFOの前に走りだし、円盤獣の尻尾を受け止めた。
円盤獣の尻尾は、グレンダイザーの首に巻き付いて、高圧電流を発射した。
「ぐわぁぁぁー!」
電流が大介の体を駆けめぐる。
「大介さん!」
「こ・甲児君……早く、早く脱出してくれ……くっ!」
大介は、TFOをかばったまま電流に耐え続けた。
「すまない、大介さん!」
そう言いながら甲児は、よろけながらもTFOから脱出し、丘を駆け上って安全圏へと身を寄せた。
「グググッ……」
電流攻撃は止まない。意識が朦朧としてきた。
「くそっー!ショルダーブーメラン!」
シュパッ!バシュッン!
ショルダーブーメランは、尻尾を切断し、やっと大介は電流攻撃から解放された。
「はぁはぁはぁ……」
数度にわたる攻撃を浴び、大介の全身は悲鳴を上げていた。
「くそっ!負けるものか!」
体勢を立て直したグレンダイザーは、円盤獣と対峙した。
ビッ!ズバババーン!
円盤獣はビーム砲を発射した。
グレンダイザーは右へ飛び跳ね、難を逃れた。その隙に、円盤獣は手に持った盾をブーメランの様に投げつけた。
ビシューン!ドゴンッ!
盾はグレンダイザーの脇腹に命中し、また円盤獣の手中に収まった。
倒れ込んだグレンダイザーは、スクリュークラッシャーパンチを繰り出したが、やはり盾に遮られてダメージを与えられない。
ビシューン!
盾は、また空を切り襲いかかってきた。グレンダイザーは倒れたまま体を仰け反らせ、盾をかろうじて避ける。
「くっそ!なんとかしなければ……あの盾さえ無ければ……」
大介は、はぁはぁと肩で息をしながら案を練っていた。
「そうだ!」
グレンダイザーは立ち上がり、ダブルハーケンを取り出した。
円盤獣は、またも盾を投げつけた。その瞬間、グレンダイザーもダブルハーケンを投げつけた。
盾は、ダブルハーケンを投げて体勢が崩れたグレンダイザーの腹部に命中し、グレンダイザーは後部に吹っ飛んだ。が、ダブルハーケンも円盤獣に命中し、両腕が切断された。
「はぁはぁ……今だ!スペースサンダー!」
ズババババーン!
スペースサンダーは、見事円盤獣の腹部に直撃し大破した。
まだ残っていたミディフォー達は、円盤獣の敗北を目にしたとたん、方向転換し逃げ出していった。
「はぁはぁはぁ……くそっ!追いかけたいのは山々だが、スペイザーがやられていては無理だ!」
大介は肩を大きく揺らしながら、はぁはぁと喘いでいた。
「大介!大丈夫か?」
観測室で、コックピットモニタに向かっていた宇門は大介に声を掛けた。
大介は、何度も大きく深呼吸しながら宇門の声に答えた。
「父さん……大丈夫です。それより甲児君が負傷しました。このまま甲児君とTFOを回収して研究所に帰還します」
「うむ。ご苦労だった。気を付けて帰りたまえ」
「はい」
大介はそう言うと、丘の上の岩陰で身を横たわらせている甲児をグレンダイザーで救出した。
「大介さん、すまない……」
甲児はそう言うと、グレンダイザーの手のひらに横たわった。
大介は甲児をTFOに搭乗させ、TFOを両手で掴み飛び上がった。
「スペイザークロース!」
スペイザーの定位置に戻った大介は、TFOとともに研究所に帰還していった。
辺りはすっかり暗くなっていた。