デュークが地球に来るまでの時間経過の資料メモ」のその後。イタリアのgonagai.netでの議論のために改めて資料を調べた結果、もう少し絞り込めそうなのでまとめてみた。「TOEI’s description is confusing」のほぼ日本語訳である。

事の発端は、東映アニメのサイトの海外向けの解説に、

After ten years’ travel through space he reaches the earth, and comes to know Dr. Umon, a space scientist. The prince names himself Daisuke Umon, and leads a peaceful life as a member of the Umon Family.

と書かれたことである。
 そのまま訳すと「10年の旅路の後に彼は地球にやってきて、宇宙科学の科学者宇門博士と知り合った。王子は宇門大介と名乗り、宇門家の一員として平穏な暮らしをしていた。」となる。この「10年」という説明が、本編やその他の解説とも合わないのでどう解釈すべきか、というのが、gonagai.netで議論された。

結論からいうと、公式の上記の記述は間違っており、制作資料と本編のみの情報から、デュークがおよそ2年ほどさまよった後に地球に到着したとすれば、キャラクターの年齢も含めて全て矛盾なく説明できる。

まず、議論の前提として、マジンガーワールドは現実の世界と時間軸を共有する物語である、とする。現実におきた出来事のいくつかがマジンガーのストーリーに反映されていることから、このように仮定しても間違いはないと思われる。たとえば、1973年にはオイルショックが起きた。1974/04/21に放映されたマジンガーZの73話には、オイルショックのためボスボロット用のガソリンを買えないという描写がある。

甲児はグレートマジンガーの最終決戦の時にマジンガーZに乗って参戦した。さらに、グレンダイザーの1話では、富士山の上を飛びながらマジンガーZでの戦いを思い出して、「今の俺はマジンガーZの操縦者じゃねぇ」とつぶやいている。つまり、Z、グレート、グレンダイザーは同じ時間軸に並ぶ物語である。(注:東映まんが祭りのZとグレートの交代劇や、グレンダイザー対グレートマジンガーなどが上映されたので、3つの物語が一続きのものだというのは日本人にとっては当たり前だが、イタリアでは放映順序が異なっている上、まんが祭りで上映された内容が編集されずに時間を追って紹介されたわけではないため、話の順番に混乱が生じていた)

これらを踏まえて、3つの物語のタイムラインチャートを描いてみた(クリックで拡大)。

Timeline jpn

このチャートには、次に示した1次資料の情報(本編、シナリオ、設定画)のみを入れた。

  1. 宇門博士が「(デュークと出会ってから)かれこれ2年」と言っている(1975/10/12、第2話).
  2. 宇門大介20歳、兜甲児18歳(第6話シナリオ、1975/11/19放映)
  3. マリアは13歳(49話シナリオ、1976/09/05放映)
  4. 宇門博士が「マリアちゃんはまだ14歳」と言っている(50話、1976/09/12放映)
  5. デュークがフリード星を脱出する直前の年齢は15歳(71話設定画の記載)
  6. マリアがフリード星を脱出する直前の年齢は9歳(設定画の記載)

なお、50話で語られるマリアの年齢は、海外版では16歳に変更されており、時間経過がさらにわかりにくくなっている。ここでは日本版オリジナルの年齢を採用する。

1より、デュークが地球に来たのは1973年の秋となる。

マリアの誕生日はわからないが、3と4から、1976/09/06から1976/09/12の間に14歳の誕生日を迎えたことになる。すると、1971/09/06から1972/09/12の間に含まれる365日間、9歳であれば矛盾しない。

デュークの誕生日もわからないが、2より、1969/10/15から1971/10/05の間に含まれる365日間、15歳であれば矛盾しない。

フリード星滅亡時にデュークは15歳でマリアは9歳であった。二人の年齢がこの条件を満たすのは、1971/09/06から1971/10/05の間なので、フリード星の滅亡はこの期間に起きたと考えられる。

2より、甲児は1972/09/11の時点で15歳である。もし、甲児が1972/04/01においても15歳であれば、高校に入学することができる。これは、マジンガーZで甲児が東城学園高校の生徒であったことと矛盾しない。

グレンダイザー14話(1976/1/4放映)で、宇門博士がデュークに向かって、正月を迎えるのが初めてであると言っている。しかし、デュークは 1974/01/01にも1975/01/01にも日本に居た。単に元旦を迎えるという意味であれば、14話の宇門博士の台詞は意味をなさないことになる。この部分については、地球到着時にデュークが重傷を負っていたので、正月らしい正月を過ごすことができなかったと解釈するしかない。

ということで、公式がこんな適当なことを書いて海外のファンにまで混乱を引き起こすようでは困ります。当時の文芸資料の年齢と合った記述になおしていただきたいところです。



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このエントリーは 2014/8/23(土曜日)-00:04 に、カテゴリー グレンダイザーに投稿されました。 RSS 2.0 feedを用いて応答を追跡できます。 You can skip to the end and leave a response. Pinging is currently not allowed.

11 個のコメントがあります


  1. Osvaldo on 2021/11/15 08:35

    涼さん

    以上の説明は大変勉強になりました。
    一つ聞きたいことがありますが、年齢などがが記されているシナリオはどこで見られるのですか?出版物に載っているのですか?
    宜しくお願いします。

  2. RyoHirokawa on 2021/11/19 10:23

    Osvaldoさん、
     グレンダイザーのシナリオは一般には出回っていないので、なかなか見ることはできません。私はずっとオークションなどを探してだいぶ集めました。最近はオークションにシナリオが出ることもほとんどなく、これから調べるのは困難です。
     そのかわり、日本版のグレンダイザーのDVD-BOXの1巻付録のブックレットに、シナリオなどを全て調べて年齢をチェックした結果が出ています。こちらはまだ入手できるので、調べるなら日本のDVD-BOXの1巻で、ブックレット付きのものを手に入れる方が良いです。

  3. Osvaldo on 2022/05/09 22:52

    涼さん、こんばんは。ご無沙汰しています。お元気でしょうか? : )
    また資料についてご意見を聞きたいのですが、ちょっと気になることがあります。
    研究所の周辺の設定画なんですが、ロマンアルバム(p.36)にも魔神全書(p.210)にも同じ設定画が掲載されています。ところが、魔神全書の方には「八ヶ岳」や「富士山」などと書いてあって、方位の記号も記されているが、ロマンアルバムの方にはそういった情報は載っていません。他の詳細はまったく同一するので本来同じ画のはずだと思いますが、なぜその相違があるのでしょうか?魔神全書の設定画には後にいろいろ追加されたのでしょうか?なかなか難しいところでしょうが、ご意見を頂ければ嬉しく存じます。よろしくお願いします。Osvaldo Mercuri

  4. RyoHirokawa on 2022/05/10 02:12

    Osvaldoさん、おひさしぶりです。
     設定画のコピーは、同じ絵に後から情報が書き足されたものが見つかっています。書き足される前のコピーと、書き足された後のコピーが両方あるようです。コピーが作られた時期が違うのでしょう。
     魔神全書とロマンアルバムでは、資料を提供した人が異なっています。このため、ロマンアルバムには「八ヶ岳」「富士山」の無い絵が掲載され、魔神全書には地名の入った絵が掲載されたのでしょう。
     研究所員の設定でも同じことが起きました。魔神全書p.206では、左から、林所員、山田所員、さえき所員、宇門源蔵、となっています。私が持っている設定画のコピーでは、「さえき所員」は横線で消されて、「大井所員」と訂正されています。そして、同じページの牧童の設定の左端に「佐伯所員」が描かれています。「さえき所員」に横線のないものもあるので、元の設定画をいつコピーしたかによって、追記の有無が違ってきているということのようです。

  5. Osvaldo on 2022/05/11 22:51

    涼さん
    ありがとうございます、大変参考になります!またいろいろ教えてください :)

  6. Antonella Belli on 2022/08/09 20:14

    Buongiorno, Ryo San. Sono una Grandissima Fan di Grendizer e sono molto felice di aver scoperto questo sito, con le tue preziose informazioni.Ho conosciuto te e il sito di Hanabusa tramite il forum Gonagai.Net e tramite Osvaldo Mercuri. Sono rimasta affascinata dagli articoli di Hanabusa San,( spero di scriverlo bene 😊) Con molta pazienza, sto traducendo in Italiano le biografie che Hanabusa San, ha scritto con molta attenzione,e le sto scrivendo sul forum. Credo siano informazioni preziosi da far conoscere a più persone possibili. Adesso vorrei porti le mie domande, puoi rispondere con pazienza, non ho fretta.
    1) Viene spiegato che Daisuke San e Maria Chan hanno avuto due madri. Quella biologica e quella con cui si è risposato suo padre, dopo la morte della prima. Ho cercato la fonte sia sul Roman Album che sul Mazinger Bible, ma non è presente. Sai dove è possibile trovare questa informazione ufficiale?
    2)dopo che ho pubblicato le biografie ci sono state diverse discussioni, su ciò che è ufficiale e non. Diverse persone non credono ai dati e informazioni che ha scritto Hanabusa San. Pensano che siano fanfiction, per tappare i buchi narrativi. Io non lo credo. Penso che avesse molte fonti, su cui ricostruire la storia di tutti. Ma non posso provarlo. Scusa se sono stata così lunga, ma volevo farmi capire bene. Spero di parlare con te, più spesso. Ho provato a scrivere tramite email, ma non me la prende. Forse non sono capace 😅. Grazie mille per la tua pazienza e disponibilità

  7. RyoHirokawa on 2022/08/15 13:51

    Grazie per il vostro messaggio. Ho scritto un articolo per rispondere alla tua domanda.

    http://www.frontier-line.org/lognote/?p=3011

  8. Antonella Belli on 2022/08/15 20:44

    Thank you very much for your reply Ryo san!!! I’ll write to you in English from now on. I hope I can talk to you for a long time to come!
    Have a good evening 😊

  9. Antonella Belli on 2023/11/10 15:22

    Good morning Ryo San. How are you? I wanted to know if your gmail email is still active. I sent you a private message a few days ago about Grendizer.

  10. RyoHirokawa on 2023/11/18 09:59

    Hello, Antonella Bell san,

    It seems that the your email has not arrived.

    plase send to
    r.hirokawa@frontier-line.org
    again.

  11. Antonella Belli on 2023/11/25 03:28

    Tried sending the message back to this email. Did you get Ryo San?

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