ぷちっ……(汗)(初代 65話)

|2010/5/30(日曜日)-23:21| カテゴリー: 初代
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 65話「合成鉄獣スーパーベム」より。
 盗まれた脳を、ギャラクターなら生き返らせることができる、と、諸君に説明している南部博士。すると、背後のモニター脇のランプが点滅して呼び出し音が。

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ん?

と振り向いた南部博士、通信装置のスイッチを入れます。

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 画面に現れたのは、アンダーソン長官。

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 こんな会話が交わされます。

アンダーソン「南部博士、今度開かれる国際科学技術庁の発表会に、亡くなられたヤマシナ博士が作ったと言われている幻のロボットが展示されることが決まった」
南部「え、本当ですか……長官、どうも悪い予感がしますが」
アンダーソン「うん。亡くなってちょうど十周忌にあたるので企画されたのじゃ。ついては、脳を盗まれるという事件が起きたばかりじゃ。科学忍者隊の諸君に警備にあたってもらいたいんじゃ」
南部「承知しました」
アンダーソン「頼んだよ、南部博士」

 この後、南部博士は、通信装置の電源をさっさとぷちっ……。普通は長官が切るまで待つのが礼儀だと思うんですが、せっかちなのか何なのか、博士はそんなことおかまいなしでした。本編を見ればわかりますが、長官の台詞が終わってからスイッチを切るまでの時間がとても短いんですよ。何かもうこれ以上長官に余計なことを言われる前に切りました、って雰囲気がひしひしと。諸君と打ち合わせの最中に割り込まれて、実は機嫌が悪かったとか?

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 その後、何事も無かったように諸君の方を向いて厳かに指令。

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いいか諸君。聞いての通りだ。しっかり見張ってくれたまえ。出動!

 よくよく考えると通信装置の仕様があんまりな件。アンダーソン長官はさすがにトップだから南部博士に呼び出しをかけられるけど、南部博士が装置のスイッチを入れないと画面に出てこれないんですね。で、通信が終わったら、南部博士の側からさっさと切ってしまう、と……。
 南部博士は、忍者隊のゴッドフェニックスの通信装置に呼ばれても居ないのに一方的に出現できるのと比べたら、この基地の通信装置の仕様って一体……。長官の命令はきっちり実行する一方で、微妙に態度がでかい南部博士に見えます(これがIIになるともっとすごい態度で、それは既に書いたのですがそのうちこっちに再録する予定です)。

 この回、南部博士は、諸君に見張りを命じただけではなく、自分も展示会場にやってきます。
 ヤマシナ博士のロボットを見つめてこんな表情してます。

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これはすばらしい……。

いや、これは」植え付けられる首の作用によって、どんな目的にでも変化するという万能ロボットだ。

実際に見るのは初めてだが、やはり噂の通り、ロボットとしては最高だ

 台詞の方もロボットを絶賛中です。

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 長官を相手にした時は用が済んだらさっさと通信機を切ってしまう冷淡な態度をとるくせに、ロボットや未確認生物が相手だとわざわざ出てきて目の色を変えて熱中する南部博士、性格も趣味もわかりやすすぎます。

筒抜け(初代10、20、73、75話)

|2010/5/28(金曜日)-23:28| カテゴリー: 初代
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 諸君の行動が逐一南部博士に筒抜けになっている模様。

 10話「地底怪獣大戦争」。小型の蟻ロボットの大群が原子力発電所を襲います。このあたりは、まだ、バードミサイルの使用にいちいち南部博士の許可が必要でした。
 ゴッドフェニックス内の会話はこんな感じです。

ジョー「洪水を起こして押し流せばいいだろ」
甚平「どうやって?」
ジョー「ほら、発電所の先に川が流れてるじゃないか。」
健「そうか、あれをバードミサイルで壊すんだ。博士、バードミサイルで蟻を退治します。発射を許可してください」
南部「ようし」

 ようし、って博士……。蟻退治のために近くの川の堤防を壊すなどという作戦、報告がなければわからないでしょうに。原子力発電所の蟻退治ですから、うかつに使えば被害拡大は確実です。どう使うか知ってからでないとおいそれと許可なんか出せるはずがありません。なのに、確認もせずにいきなり許可しているあたり、実はこっそり諸君の会話を聞いていたんじゃないですか、博士。ゴッドフェニックス内に南部博士専用の盗聴器が仕掛けてあるのではないかという疑いが出てきました。

 20話「科学忍者隊危機一発」。子犬を助けたジョーが爆弾の破片を頭に受けてしまう回です。南部博士は、ジョーを遠心分離装置にかけますが、破片は抜けません。博士が目を離した隙にジョーは逃げ出してゴッドフェニックスに合流します。
 南部博士、

いや、たった一つだけ方法がある。

と言ってジョーを遠心分離機にかけても破片は抜けず。それでも、

ジョーは必ず助けてみせる。

と強気に出て、諸君を送り出しますが、あっさりジョーに逃げ出される。
 その上、爆発の衝撃で振り回されたゴッドフェニックスの中で、簡単にジョーの頭の破片はとれてしまいます。

ジョー「俺が助けた子犬は……」

 と、ジョーが言った瞬間、勝手にゴッドフェニックスの通信装置の画面に現れる南部博士。

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子犬は元気だ。破片さえ抜ければ、後は私が助けてみせる。科学忍者隊は5人揃ってこそ、全力を発揮するのだ。今の気持ちを忘れないでくれ。

 10話はまだ、南部博士が迂闊にも許可を出したという解釈もできますが、20話のこれはタイミングが良すぎます。ゴッドフェニックス内の会話を全部聞いていたのでなければ、ジョーの台詞に合わせて登場するなんてできないでしょう。どうやら、ゴッドフェニックス内の会話は、通信していないときでも南部博士に筒抜けと考えるしかなさそうです。
 破片が抜けた直後だと、南部博士の破片除去案が大口叩いておいて効果無しだった以上、「ゴッドフェニックスで振り回されただけで出ちゃいました」じゃあ、南部博士の立場はありません。出るに出られずタイミングを見計らっていたであろう南部博士の姿が思いやられてきます。話が子犬のことになったのですかさず登場。「後は私が助けてみせる」と、あくまでも自分で何とかしようとしてますが、問題の大部分は解決済みですよ、博士。その後のとってつけたような台詞、いかにもばつが悪いのを誤魔化しているようで、普段は厳しい南部博士が何だかかわいく見えてきます。

 73話「カッツェを追撃せよ!」。鉄獣メカを撃破した直後に、ゴッドフェニックスの通信装置に出てくる南部博士。本人は、別荘か三日月基地に居るのでしょう。

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今の戦闘シーンをビデオテープで再生するから、よく見るんだ。いいか、君たちは見落としたが、脱出用ロケットで、ベルクカッツェは北北西へマッハ2.5で逃げている。

 そのビデオ、誰がどこで撮影してたんですか、博士……。
 追跡機が飛んでる様子はありません。ということは、南部博士が、ゴッドフェニックスに搭載したカメラで戦闘の様子を全部録画し、リアルタイムで受信して、何か不審なことはないかチェックしているという結論になります。ゴッドフェニックス内の会話の盗聴疑惑といい、どうやら、南部博士は、心配性なのか完璧主義者なのか、諸君の活動の全てを把握しないと気が済まないみたいです。

 75話「海魔王ジャンボシャコラ」。竜の親父が遭難したために、竜がポカをやらかしまくる回です。
 最初に竜が遅れた時は、

もういい。済んだことをとやかく言っても始まらん。これからは気を付けてくれたまえ。

と鷹揚な態度を見せる南部博士ですが、うっかりしててタンカーと合流し損なったためにタンカーが撃沈されたときは、かなり怒っています。

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健、タンカーがギャラクターに襲われているという報告が入ったぞ。お前達は何をしているんだ!早く現場へ急行しろ、馬鹿者。

 「馬鹿者」発言は、博士にしては珍しいです。諸君が戻ってきてからも、全員を集めて叱りとばします。

馬鹿者。失敗しましたで済むと思っているのか。君らのやったことをよく考えてみろ。力の限り戦って失敗したのなら何も言わん。それが何だ、ぼんやりして到着が遅れましたじゃ話にもならん。何があったか知らんが、プライベートな問題で任務をおろそかにすることは許さん。それが科学忍者隊の宿命なんだ。世界の安全を任された私の立場にもなってみたまえ。

 確かに、戦ってしくじったり、力及ばなかったことについて、南部博士が責めたことはありませんでした。「命令を無視するな」という説教はしていましたが……。「私の立場になってみたまえ」は今回が初めてです。まあ、ぼんやりが原因なら言われても仕方がない状況ではあります。
 それでも、何が本当の原因か把握していないことに気付いたのか、南部博士は諸君の様子を立ち聞き。

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 原因が竜の親父の行方不明にあるとわかって、命令違反して出て行く健をそのまま行かせ、後から、事実上の竜の親父の救助命令を出します。

今、アマナ諸島の近くで漁船が遭難したらしいという報告が入った、諸君は直ちに救助に向かってくれ。今の君達じゃあギャラクターには勝てん。遭難した人達を救助する任務くらいが一番似合っているだろう。そのかわり、今度失敗したら承知しないぞ。いいな。

 健は、博士が話を聞いていたことに感づきますが、それはそれとして南部博士ってば何と言うツンデレ……。「べっ、別に竜の親父を救出しろなんて言ってないんだからねっ!上の空のお前らじゃ戦闘なんかできっこなくて、もう救助くらいにしか使えない役立たずってことなんだからねっ!」と頭の中で翻訳され、萌えまくりました。
 この後が、「こちら南部だ。実はギャラクターがウラン貯蔵庫を狙って行動を開始したという情報が入った」「頼むぞ……」の呟きの合わせ技。南部博士って一体どんだけ萌えキャラなんだと……。可愛すぎます南部博士。

 ツンの方は眉に皺寄せて命令するいつもの姿だとして、デレの方が諸君のやってることを全部把握しようとする方に向かうのが、何とも南部博士らしくて、見ていて堪りません。

 さらに、68話「粒子鉄獣ミクロサターン」。
 謎の核爆発が起きた後の島に諸君を派遣する南部博士。

 国連軍の飛行機が入っただけで燃えてしまって爆発するような放射能の渦を突っ切らせるにあたって、

いや、ゴッドフェニックスならできる。

とあっさり断言します。放射能はなぜか帯の部分だけだということについても、

データーは信じてほしい。集められた全ての資料を分析したのは、私だ。

と自信満々です。こんな↓ご様子。

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 博士何だかかっこいい……。こういう時は頼りになるなぁホントに。
 この作戦は、問題は火の鳥をやった結果燃料が足りなくなることだけだ、と、補給用の調査船(空母)を待機させます。
 一方、三日月基地の場所を突き止めるために、カッツェが南部博士に扮するわけですが……。これがまた親切な指揮官を演じたために逆効果もいいところ(爆)。

ニセ南部「死の街へ君たちを送り込んだのだ。心配になって私もやってきたんだ。君たちの元気な顔を見て安心したよ。さあ、基地に帰ろう」

 準備万端整えて作戦開始した南部博士が、わざわざ出てきてこんな優しい言葉をかけるはずがありません。今回は、諸君のことを(他の作戦に比べて)特に心配もしてないでしょう。自信満々の時の南部君ってのはそういうヤツです。

ニセ南部「うん?う、いやぁ、あの島の調査方法を変えてみなくてはいかんのだ。一度基地へ戻って検討したいんだよ」
ニセ南部「いやぁ、我々だけでなく国際科学技術庁の協力も必要だ。さあ、ゴッドフェニックスで基地に戻ろう」

 「集められた全ての資料を分析したのは、私だ」と言い切って作戦開始した南部博士が、舌の根も乾かないうちにこんなことを平然と言うはずがありません。こういうことを言う羽目になったとしたら、何か相当ひどいしっぺ返しを喰らった後で、プライド傷つきまくりになってるはずです。もし言うならば、眉間に深い縦皺を刻んで拳震わせながら言うはずです。読み切ったと思った予想が外れた時の南部博士って、そりゃもうめちゃくちゃ不機嫌ですよ。南部博士がリベンジの方法を思いつくまでは近くに寄らない方が身のためって感じですから。でもそういうわかりやすいところがかわいい……。
 さすがに、健も、このニセ南部博士の態度を何となく不審がってましたけど。
 カッツェの演じた南部博士、親切過ぎる上に、本物ならば当然こだわるべきところにちっともこだわってないんですよね。ただ、普通の人の基準で見ると、付き合いやすいのはニセ南部博士の方だというのが何とも……(汗)。

何で南部博士だけ……(泣)

|2010/5/23(日曜日)-20:26| カテゴリー: 初代, 蒐集
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 68話「粒子鉄獣ミクロサターン」。
 突然、平和な島で起きた核実験の謎を探るために諸君達が出動しますが、島の周囲に放射能帯があるだけで、島には核実験の痕跡がありません。鉛でできたらしいミニ鉄獣ミクロサターンが、壊れた街の表面を覆って、放射能を防ぐとともに、無傷なように見せかけていたからです。
 放射能帯を突っ切るには科学忍法火の鳥しかなく、往復で火の鳥をやると燃料が足りなくなるので、南部博士は島の近くに補給のための調査船を待機させます。鉄獣に襲われて火の鳥で逃げ出し、衝撃で墜落……と思ったら無事に着艦していて、南部博士も来ています。ところがこの南部博士はカッツェが変装した偽者で、早く基地に戻ろうなどと言って、三日月基地の場所を突き止めようとします。無くなったはずの燃料が残っていたことから、健が気付いてブーメランでニセ南部博士を攻撃します。
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 何とか直撃を避けるニセ南部博士。

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 しかし、右頬に縦に傷が入ってしまいます。

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健「ジョー、ジュン、甚平、博士の顔をよく見ろ」
ジュン「血が流れてない」
健「鈍いぞベルクカッツェ。自分の仮面に傷つけられて気が付かぬとは、いかにもお前らしい」

 さて、こちらは、タツミムックの「検証70年代アニメーション 誰だっ!!科学忍者隊ガッチャマン」の表紙です。株式会社竜の子プロダクション監修、 2000年5月1日発行、第一刷、ISBN4-88641-501-6、定価は1500円です。現在でも、アマゾンマーケットプレイスやヤフオクに出品されていますので、入手は容易と思われます。
 出版された頃に書店で見つけて即買いしてました。その時もあれっと思ったのですが、なかなかLDを買える経済状態ではなかったり、いろいろばたばたしていて、じっくり確認するのが今頃になってしまいました。

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 キャプ画像と色合いが違ってますが、南部博士の顔に注目。
 右頬に縦に傷がありますorz。
 表紙の諸君は全員本物なのに、南部博士だけカッツェが変装した偽者です(爆)。いやもうホントにあんた誰?
 確かにこの回の南部博士はカッツェの変装なのに作画が良いからイケメンでした。しかし、よりによって表紙に偽者を選んでこなくたって……。南部博士の扱いって一体……。南部博士ファンとしては、第二刷を出すときに博士の絵を差し替えろと言いたいです。そのまま絶版になってしまったらしいので、今更クレームの出しようがありませんが。
 とりあえず、この表紙の絵を選んだ奴ちょっと来い(怒)ヽ(#`Д´)ノ

 ってか竜の子プロダクションが監修してて、表紙がニセ南部博士でいいんですかホントに。こういう、南部博士ファンを悲しませることをやっちゃったんだから、タツノコプロは責任とって、ちゃんともう一度ガッチャマンをリメイクして、今度こそ(OVA版の意味不明な格好の南部博士じゃなくて)TV版の南部博士を出してもらいたいです。

65話の敵と南部博士の台詞(初代65話)

|2010/5/17(月曜日)-23:00| カテゴリー: 初代
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 初代65話「合成鉄獣スーパー・ベム」。
 ヤマシナ博士の脳が未確認生物に奪われ、忍者隊がおいかけるが滝壺付近で見失います。攻撃してきた未確認生物の触手を持ち帰って南部博士に見せます。

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 巨大な電子顕微鏡に見える(さすがに70年代だから共焦点顕微鏡ではないだろう)で、未確認生物の試料を確認しています。
 このあと、南部博士は、顕微鏡から目を離し

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これは、地球上に住んでいる生物じゃない。ベムだ。

と言います。さらに、

宇宙人でも下等な種類、つまり乱暴な種類の宇宙人に属している。

と続けます。

 私が引っ掛かったのは、なぜ博士の台詞が「これは、ベムという地球外生物の一種だ」ではなかったのか、ということです。南部博士であれば、問題の生物の固有名詞がわかっていて同定できていれば、そのことがわかるようにはっきり言うのではないでしょうか。

 敵メカの名前を何故か正義側も知っている(伝えられてもいないのに一体どうやって?)が子供番組のお約束でしたが、今回の敵は、ギャラクターが作り出したものではありません。元々宇宙に居た生物です。ということは、宇宙生物についての知識がある程度地球人側と共通のものであった場合、ギャラクターが勝手に名前をつけるということは無いでしょう。X1号と合成したあと、盗んだ脳でコントロールしているものについては、ギャラクターの作品ですからギャラクターが勝手に名付けてもいいんでしょうけど。にもかかわらず、ギャラクター側でもこの生物を「ベム」と呼んでいます。だから、この生物の種としての名前が「ベム」であることが既にわかっている、と思いたくなりますが、ちょっと待ってください。あくまでも南部博士の台詞の方にこだわって考えてみます。
 南部博士の台詞をそのまま受け取れば、仮にISOあたりで宇宙生物の分類学の研究が進んでいるとしても、今回の敵の種類を、南部博士は同定していない。というか同定できていないことになります。未知の生物を見た時にそれが下等かどうかを判定する基準はある程度わかっているけれど、宇宙生物分類図鑑を持っている状態ではないということのようです。
 もともと、「ベム」というのは、SF用語で、宇宙から来た未知の生物を指します。ウルトラマンの怪獣だって、宇宙由来のものは全て「ベム」ということになります。であるならば、この65話の「ベム」は、固有名詞ではなくて一般名詞だと考えた方が、筋が通ります。
 最初の南部博士の台詞は、地球外生命体のことを改めて「ベム」と言い直しただけだということになります。それは、広くそう呼ばれていた(というかむしろ常識になっていた)からでしょう。ギャラクターも、隊長や兵士などの構成員は地球人ですので、地球人の文化を共有していますから、まだ固有名詞が無い宇宙生物を仮に「ベム」と呼んだのでしょう。

 この回を解説したムック本の記述を引用してみます。
 「ガッチャマン全集」では、

医学センターに保存されていたヤマシナ博士の脳を宇宙生物ベムが奪い去った。

 「誰だっ!!科学忍者隊ガッチャマン」では、

竜巻ファイターで吹き飛ばすとベムが姿を現し、滝に逃げた。現場で入手した触手を南部博士に見せると、乱暴な宇宙生物と判明。

 「科学忍者隊ガッチャマンマテリアル」では

下等で乱暴な宇宙人・ベムと、故ヤマシナ博士が開発した高性能ロボ・X1号が合体した姿。

 「僕たちの好きな科学忍者隊ガッチャマン」では

幾本もの長い触手を持つ地球外生命体ベムが、医学センターからロボット工学の権威・山科博士の脳を強奪。

 コロムビアのDVDライナーノーツでは

ベム
ギャラクターが宇宙から連れてきた、下等な部類に属する宇宙人。

 デアゴスティーニでは

ギャラクターが宇宙から連れてきた地球外生命体ベムに、山科博士が作った万能ロボットX1号を合体させ(以下略)

 同人では定評のあるGLO&ガッチャマン対策本部さんの「科学忍者隊ガッチャマン鑑賞の手引き《改訂版》」では

ギャラクターは下等な宇宙生物ベムを地球に連れてきて、(以下略)
健がブーメランで切り取ったベムの触手を南部が分析すると、それは下等な種類の宇宙人ベムであることが判明した。

 といった具合で、ことごとく、「ベム」を固有名詞として扱っています。

 というわけで、南部博士の台詞の「ベム」は一般名詞だろうという私の説は、相当に旗色が悪いのでした^^;)。
 南部博士の台詞も微妙といえば微妙ですし、SF用語に地球外の未知の生命体をあらわす「ベム」というよく知られた用語が既にあったからといって、登場する地球外生命体が「ベム」という固有名詞を持ってはいけないという理由はありません。
 それでも、敢えてここで、あの触手生物はまだ名無しで「ベム」は一般名詞であり、名前が無いので敵味方ともとりあえず一般名詞で呼んでいた、という説を出しておきたいと思います。

 南部博士萌えの真っ最中なので、やはり、博士の台詞は大事にしたいんですよ。
 まあ、南部博士だったら曖昧な言い方はしないに違いない、という願望も多分に含まれてはいるんですけどね。

 あと、小隅センセがチェックしてたんなら、既に意味の決まっているSF用語を固有名詞にはしないんじゃないか、と思う部分もあったり。

小道具(初代63、F 42話)

|2010/5/16(日曜日)-17:48| カテゴリー: F, 初代
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 63話は、南部博士の登場シーンが多いので、博士ファンにとっては見所のある回です。
 小道具の扱いをに注目してみることにしました。

 まず、既にナイターが始まってしまって今更避難命令も出せない状態だ、というシーン。
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 南部博士の腕時計のデザインがわかるシーンです。皮バンドに青い文字盤、黒い針と時刻のメモリ、本体はシルバーでしょうか。普通のビジネスマン向けという感じのデザインです。
 これが、Fになると、現在位置を教える発信器になっていたり。
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 Fの42話に登場したものです。時計機能くらいはあっても良さそうですが、本編中では語られませんでした。スイッチを押すと、小さなパネルが点滅して、忍者隊に現在位置を知らせる仕組みです。筐体もバンドも金属製のようです。

 次に、63話より。
 健からの連絡を、三日月基地で受けるシーンです。

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 通信機の形と大きさに注目してください。
 通信機のサイズは、昔の黒電話の受話器よりややいかついくらいの大きさです。90度曲げた部分にマイクがあって、そのまま机の上に立てられる形をしています。

 横から見るとこんな感じです。

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 どう見ても、折りたためる構造ではありません。通信機の平らな部分を、普段は机の上とかで立てておけるようにしたデザインになっています。
 この回、南部博士は最後までこの通信機を使って忍者隊と連絡をとっています。

 このシーンは、ゴラクエン球場地下の水爆の爆発を止めることに成功したという報告を受けた時のものです。南部博士は、三日月基地から移動し、ゴラクエン球場近くの警察署か警察本部の一室にやって来ています。警察に、水爆の起爆装置捜索の依頼に来て、そのままそこにとどまったのでしょう。

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 これで事件解決なので、後は撤収するだけです。通信機は三日月基地から持って来たのでしょうから、持って帰らなければいけません。

 で、南部博士はどうしたか。
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 上着の右側持ち上げてる……。

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 中に突っ込んで……。

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 右内ポケットに収納。……っておいちょっと待てや( ゚д゚)。いくら何でも無理ありまくりだろーっ!!

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 平べったいものや、折りたためる構造のものならともかく、その通信機、マイク部分が90度曲がってて厚みがかなりあります。ぴっちり身に付いたスーツの内側に納まる代物じゃありません。
 そのサイズと形状のものを収納できるスーツの内ポケットって一体……(汗)。南部君の上着、いつから四次元ポケット完備になったんだ、と思わず突っ込んでしまいました。
 F10話での、スーツの下に拳銃2丁だった博士にも驚きましたが、今回の通信機収納もそれに匹敵すると思います。
 上着を脱がせて中がどうなってるか、ぜひ拝見したいものです、博士。

 

対応の違いが……(初代63、F 22話)

|2010/5/15(土曜日)-21:17| カテゴリー: F, 初代
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 ガッチャマンの初代の前半はまだ子供らしい感じだった諸君が、後半になるといろいろ背負い込んだ描写がなされるようになって、それにつれてドラマも重くなったという話は、いろんなムック本に出ています。
 諸君達の設定年齢は10代ですから、経験によって変わるというのは、自然な描写です。しかし、いろんな目に遭って経験値(何の?)を上げたのは諸君達だけではなかったようです。南部博士も変わってきているようなんですよ。

 初代63話「皆殺しのメカ魔球」では、ゴラクエン球場の地下に国全体を吹き飛ばす巨大水爆が設置され、起爆装置が球場のどこかに置かれます。警察とガッチャマンが総出で起爆装置を探し、時間との戦いになります。
 南部博士も、まだこの頃はウブだった(違)ので、捜索を依頼に行った警察署で報告を待つ間、こんな状態です。
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 場所はゴラクエン球場近くの警察署と思われます。
 ソファに座り込んで頭を抱えています。冷静な南部博士にしては珍しい姿です。
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 まあ、ある意味普通の反応ではあります。

 お約束通り、起爆装置はなかなか見つからない。その間、南部博士は通信機片手に冷や汗流しまくり。
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「急ぐんだ!」と叫びながら必死の表情。
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 もう汗ぐっしょりです。

 間一髪で健が爆発を防ぎ、起爆装置を発見、報告を受けた後、警察署の建物からブラインド越しにゴラクエン球場を眺めている南部博士。
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 「ありがとう、みんなよくやってくれた」、と呟いていますが、冷や汗はまだおさまらず、緊張の連続で何だかお疲れのご様子。

 この後、南部博士は、攻撃で崩壊する三日月基地に閉じ込められて危ういところを諸君に助けられたり、カッツェに攫われたり、地球壊滅のカウントダウンを待つ羽目になったりします。
 IIでも、Gタウンごと2回も海の藻屑になりかかったり、大津波で水没するISO本部に閉じ込められ、脱出の直後に目の前で本部ビルが水没し倒壊するのを見てしまったりします。全地球規模での被害も半端ではありませんでした。
 Fでは、長官就任の挨拶の最中にエゴボスラーに宣戦布告され、ニュージョーク市が毒ガス攻撃された時はISO本部ビルの長官室でガスに耐えてました。

 こんな目に遭いまくると、さすがに南部博士だって、諸君達とは違う意味で変わらざるを得なかったようです。

 F22話。軌道をはずれた人工衛星がニュージョーク市のISO本部ビルの上空を通過、高性能核ミサイルを発射の予定、迎撃までにもう時間が無いという状況になります。
 ISO本部が狙われているという第一報を受けた南部博士。
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「何、あと十数分で国際科学技術庁が襲われる?」
と言いつつも、あんまり焦った風もありません。

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「高性能核ミサイルか……」
と考え込んでます。冷や汗かきまくりの初代の時の反応とは、だいぶ違います。
 健が迎撃を提案したのでそれを了承し、鴨技師長に協力を頼みます。

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 ISO長官が浮き足立っても仕方がないし、もはや逃げる時間も避難命令を出す時間も無かったことは確かですが、初代63話で警察署で頭を抱えて座り込んでいたのとは、随分様子が違います。
 この後、迎撃成功の連絡が、鴨技師長から伝えられます。

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 ディスプレイを見つめたあと振り返ろうとします。あくまでも冷静で、鋭い目が素敵です。疲れた様子は微塵もありません。

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 最期に呟くのは、「ありがとう、ガッチャマン」の一言です。
 自分も周囲の市民も吹き飛ばされる状況での核兵器への対処の後ですが、割と平然としています。汗びっしょりになっていた63話とはえらい違いです。

 南部博士、実は随分図太くなってませんか初代に比べて。まあ、ある程度は腹括ってないと、ISO長官なんか務まらないでしょうけれども。
 

 初代61話「幻のレッドインパルス」。
 偵察帰りのホントワール上空で、健はレッドインパルスの3機編隊に遭遇します。隊長機には鷲尾健太郎(実はカッツェの変装)の姿が。親父が生きていた、という健からの連絡に、南部博士は、

馬鹿な、そんなんことがあるはずがない。もし彼が生きていたらまず私のところに報告があるはずだ。

と一言。
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 南部博士と鷲尾健太郎氏とのつながりの深さが表れている発言をしています。というか博士、鷲尾氏の行動については自分が自信を持って判断できると思っているみたいです。
 健が興奮しているのに対し、南部博士は冷静です。

レッドインパルスが生きている……まさかそんなことが。

と疑い、残りの諸君に、事情を確かめるように指示します。
 一方、健は、レッドインパルスの基地と称する所に案内され、隊長からギャラクター基地の資料を受け取ります。南部博士のところに持っていくように言われ、健は持って帰ります。
 資料を検討する南部博士ですが、それでも信じません。
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うむ。しかしどう考えても信じられん。まさかレッドインパルスの隊長が生きていたとは。

 V2計画を食い止めるのに必要だったミサイルの爆発を喰らって生きていられる人間などいない、ということは、V2計画の中身を完全に理解していた南部博士だからこそ、余計に実感を持ってそう考えていたのではないでしょうか。
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 こんな顔↑して、資料だけでは証拠にならないと言い放ちます。

それだけでは、レッドインパルスの隊長が生きているという証拠にはならん。そんなものはエンピツと紙さえあれば書けるからな。

 それでも、

それは私だって信じたい。しかし事が事だけに。それより他の連中はどうしたんだ。君を捜しに行ったはずだが。

 との発言。博士だって、本音の部分では信じたいという気持ちはあったのでしょう。それでも、指揮官としての立場を忘れず、残る4人がどうしているかに気を配っています。ストイックだなぁ南部君は。
 この後、健は、真実を確かめるために、もう一度レッドインパルスの基地に向かい、捕らえられてしまいます。残る4人は先に捕らえられていました。閉じ込められた後、諸君は、カッツェから、健が三日月基地に持ち帰った資料のケースに発信器が取り付けられていることを知らされます。
 健は、おかえしに、格子のスキマからカッツェに発信器をくっつけます。
 妨害電波のため、健達は基地とは連絡がとれません。さらに目の前に時限爆弾を仕掛けられてピンチに陥ります。ジョーがドリルで格子に穴をあけ、健がマキビシ型爆弾で吹き飛ばして全員で脱出、無線で、南部博士に、ケースが発信器であることを連絡します。

わかった、すぐ処分しよう。

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 ケースを焼却炉に投げ込んで、ケースが完全に燃えて無くなるまで、南部博士はじっとそれを見つめています。

 結局、三日月基地からの発進が消失し、かわりに健がカッツェにとりつけた発信器がギャラクター基地に落っこちて発信を続けたため、ギャラクター基地とジガバチメカで魚雷を撃ち合って双方自滅、という結末になります。

 この回、博士はずっと冷静でした。見た目は……。しかし、実は相当に怒り狂っていたのではないかと思うんですよ。
 レッドインパルス隊長が亡くなった時、ISOの各国代表の前で思わず涙し、「私の良き友達の犠牲によって」とまで言い、アンダーソン長官の呼びかけにも答えず立ち去った博士です。レッドインパルス隊長の生存を、どれほど信じたかったでしょう。それでも、生前の鷲尾氏とのつながり=生きているのに南部に連絡が無いということなど有り得ない、ということと、南部博士自身の指揮官であり科学者である部分が、情に流されることを止めたようです。ケースに発信器ということがわかった時点で、レッドインパルスの生存が騙られたものであり、やはり生きている可能性は無いのだという事実が改めて博士に突きつけられたわけです。焼却炉の中で灰になっていくケースをじっと見つめている南部博士、間違い無く焼却処分して基地を守らねばならないとか、今から即座に焼却したところで基地発見を食い止めるのに間に合うのかといった心配以外にも、いろいろ考えるところがあったのではないでしょうか。

 さて、健からの「お返し」は、カッツェを殴りまくったり、その場でカッツェに発信器をくっつけるという、ある意味単純なものでした。
 しかし、南部博士にこういうやり方でちょっかいを出してしまうと、そんな単純なお返しでは済む筈がありません。もっと手が込んでいて大がかりなお返しが待っています。
 優等生の健がキレると怖いのは確かですが、冷静でマッドな南部博士がキレるともっと怖い。

 それがわかるのが、この次の回、62話「雪魔王ブリザーダー」。
 諸君そっくりのバードスタイルのロボットが登場し、本物と遜色ない敏捷さと戦闘能力を見せます。南部博士曰く

いや、科学忍者隊全員の身代わりロボットを使う作戦だ。ロボットとはいえ姿形は全く同じ、電子頭脳で自分の意思通り行動するという、国際科学技術庁の科学力を結集したスーパーロボットだ。ギャラクターの秘密基地がわかるし、科学忍者地の生命も守れるという一石二鳥作戦だ。

 どうやら、南部博士は、国際科学技術庁の科学者技術者に動員をかけてロボットの開発をやったようです。
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 この光景↑ですが、手前側がロボットをテストする部屋になっています。窓の向こうに、働いている人達が大勢います。
 諸君への作戦の説明は、

そうじゃない、健。君たちにも大事な任務があるんだ。あのロボットをギャラクターにわざと捕らえさせ、秘密基地の位置と情報を電子頭脳で送らせ、ベルクカッツェを捕らえる計画を練る。その上で、君たち本物の科学忍者隊に行動を起こしてもらうのだ。

 というものです。
 前回、発信器付きのギャラクター基地資料を三日月基地まで持ち帰らされたので、今度はまるきり同じ方法で報復するつもりなのが丸わかり。
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よし、早速ロボットを出動させて囮作戦開始だ。

 作戦開始を告げる博士、何だか表情にも気合いが入っています。親友であるレッドインパルス隊長の生存を騙ってわずかでも期待を持たせたあと踏みにじる、などということをされたので、最低でも怒り倍増と思われます。いや、3倍返しくらいいくかな……(汗)。
 南部博士は、国際科学技術庁内部に動員をかけるだけでは気が済まなかったようで、国際警察連盟がガッチャマンの功績をたたえて表彰式をおこなう、というイベントまで企画したようです。
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 事前に宣伝しまくった結果、ど派手なパレードの後、表彰式が行われることになったスタジアムの観客は8万人。来賓まで呼んじゃって、その中にしっかり座ってる南部博士。「科学忍者隊の生みの親である南部博士」と、アナウンサーにまで言わせています。目立ってギャラクターをおびき出そうという作戦ですから、スタジアムが襲撃されることくらいは当然予想していたはずで、この人混みなら被害者多数になることもわかりきっていた筈ですが、南部博士、今回は平然と作戦続行です。前回のギャラクターのやり口に、よほどブチ切れていたとしか思えません。
 ロボット忍者隊と握手しに出て行ったあたりで、案の定ギャラクターのマンモスブリザーダー登場。南部博士は本物の方の忍者隊に連絡しますが、命令は「待機」。
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 とりあえず走って退避しながら忍者隊に連絡中。
 スタジアムはこの↓ありさま。
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 目の前が鉄獣だったり、そこらじゅうが攻撃で凍り付きつつあるのに命令は「待機」。
 そのあと首尾良く逃げ出した南部博士、動員をかけた技術陣に、発信器の行き先を突き止めさせます。
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 部屋を歩き回って、「まだギャラクターの基地は突き止められんのか。もう一度計算をやりなおしてみろ」と苛ついてみたり、わかったらわかったで「緯度90、北極点か。あの発信装置が壊れていなければ、ぶ厚い氷の下にギャラクターの大規模な秘密基地が隠されているのか」。とにかくこれでやっと本物の忍者隊の方に出撃命令が出るわけです。
 今回、健は、南部博士の命令を無視して、ロボットに混じってギャラクターに連れ去られます。ジュンが途中で気付いて、急ぎ出撃しようとするのですが、「健が……」と口ごもるジュンを見た南部博士、

健がどうしたんだ。間もなくロボットによってギャラクターの秘密基地の場所が正確にわかる。出動はそれからでも遅くはない。

と、
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こんな顔してあっさりスルーします。普段だったら、「健がどうしたんだ。はっきり言いたまえ!」と問い詰めるはずですが……。囮作戦遂行の優先順位は、南部博士にとっては相当高かったようです。

 基地に戻ったら、健は、入れ替わったことを博士に正直に話して謝ろうと考えていたようです(ナレーションによれば)。囮作戦が成功して、基地を叩けたので、南部博士の機嫌は一応はいいはずですので、正直に伝えても大丈夫でしょう。
 何せ、南部博士は、普段なら考えるはずのスタジアムの犠牲者のことやら、ジュンの不審な態度やらを全部無視し、あちこちに動員をかけまくって、前回と同じ方法でギャラクターに報復することに向かって、脇目もふらず一直線に突き進んでいたのですから。それが成功した余韻に浸っているうちは、健が命令を無視したことを白状しても、多分そんなに健を叱ることはないでしょう。それにしても、南部博士は、レッドインパルス隊長を騙しのネタにされ感情の部分を逆撫でされて、よっぽど根暗く深く怒っていたんでしょうねぇ。動員した人数と、かかったであろう予算からみた「仕返し」作戦の規模が、南部博士の怒りの程度を物語っている気がいたします。

 全てが終わって、鷲尾健太郎氏の墓前に花やら酒やらを持って報告に行く南部博士の姿が目に浮かびます。ついでに、その報告を聞いた鷲尾健太郎氏が草葉の陰で「南部、お前なぁ……」と頭を抱えて溜息をついている姿も。

やっぱり触角頭……(初代 58話)

|2010/5/4(火曜日)-21:13| カテゴリー: 初代
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 「いや私は完成品ができた時がギャラクターを警戒すべき時だと思っていたが、まさか試作品の途中で強奪されようとは」。予想に反して早々とジェットカッターを強奪されてしまって、しょんぼりな南部博士。横顔なので、髪の毛がどうなってるか今一つはっきりしません。
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 それでも気を取り直して、忍者隊に向かって「諸君、一刻も早くジェットカッターを取り戻すか、破壊してきてほしい」と指令を出します。
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 ところが、珍しく健が「ちぇっ、また国際科学技術庁の尻ぬぐいか」「だって、そうじゃないですか。あれを盗まれたから取り返してこい、これを奪われたから何とかしてくれ。俺達の仕事は、いつも国際科学技術庁の尻ぬぐいばかりだ」と不満を述べる。
 その不満を聞いた南部博士。目一杯機嫌が悪くなります。
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 このあと、「ならん!健、科学忍者隊は君個人の復讐のためにあるのではないんだぞ。嫌ならいい。事件は国際警察にでも頼もう。君たちには頼まん」と言って、部屋を出て行こうとします。
 機嫌と気分を反映して、前髪の跳ね具合が変わるみたいです。
 リアルタイムで見ていた時も、コロムビアのDVDが出た時買って見直した後も、まさかこういう触角頭だとは気付きませんでした>南部博士。今回きちんと見直して、何だかわかりやすい博士に改めて萌えまくっています。

 初代の55話のタイトルは「決死のミニ潜水艦」です。
 カッツェが新しい汚染物質の入った液体セルロールPCBを作って海を汚染する作戦に出る→南部博士対策を研究するもすぐに汚染除去する方法は見つからず→海を汚されたくなかったら降伏しろとカッツェが要求→健は降伏したフリをするが見抜かれ、巨大タンカーが汚染用潜水艦の母艦ではないかと疑う→ゴッドフェニックスに搭載していたミニ潜水艦で調査→ビンゴ、というのが全体の話の流れです。
 反撃の時、健だけがミニ潜水艦で母艦に乗り込んで数人のギャラクター兵士を倒したり、その後カッツェも居るブリッジに行ってこれまた数人のギャラクター兵士を倒したりするのが今回のアクションです。この作戦が危険を極めるのであれば、「決死のミニ潜水艦」ということになるのもわかるですが、どうも様子が違います。
 まず、今回の困難とは、ベルクカッツェが一体どこから指令を出しているか突き止めるのが技術的に困難という話です。しくじれば海を汚されるので、駆け引きに失敗するとまずいという困難もあります。が、忍者隊の身に重大な危険が及ぶかというと、そんなことは無いわけです。後半、カッツェはゴッドフェニックスを破壊しようとしますが、これは、海洋汚染作戦が阻止されそうになったからそちらに切り替えたわけで、武器を準備していたとしても、当初の目的とは違います。
 他の回では、ギャラクターの基地や鉄獣の中に入ったら、数十人から100人超くらいの、アサルトライフル完備のギャラクター兵士にぐるりと取り囲まれているのが珍しくなかったことを考えると、今回健が相手にした敵の数はとても少ない。健にとっては、今回の戦闘は楽勝でしょう。「決死の」という形容詞がつく余地はどこにもありません。
 ところが。
 潜水艦で出撃した後、健はヤバい目に遭うんですね。ミニ潜水艦内部がこんなこと↓になります。
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 つまり、どっかの配線が焼けたらしく、ミニ潜水艦の操縦席内部に煙が満ちて健は咳き込みます。足元の配線からも火花が……。これで健は慌ててギャラクターの汚染用潜水艦の後を追って母船に潜り込む羽目になります。
 でもね、これって、どうみても単なる整備不良ですよね。ゴッドフェニックスまわりの設計製作と整備運用の責任者って南部博士ですから、ミニ潜水艦がこの体たらくってのは、南部博士の責任ですよね。博士、滅多に使わない設備だからって、整備に人手を回さないとかチェックを怠るとか、何か手抜きをしませんでしたか?
 最後に、爆発した母艦から漏れ出した汚染物質から、健は必死で泳いで逃げることになります。これが理由で「決死の……」なのかと思ったのですけれど、ミニ潜水艦が無事ならそれに乗って悠々と逃げ出せたかもしれませんね。あの煙の吹き方じゃそれもできそうに無かったから、健は泳いで逃げることになったんじゃないでしょうか。
 つまり今回のタイトルが「決死の……」になった原因を作ったのは南部博士というオチのようなんですよ。

 じゃあ、博士が何をしていたかというと、汚染物質は突き止めたものの、迅速に浄化する方法の発見には至りませんでした。最後に漏れ出した汚染物質は、ギャラクターが予め用意していた浄化カプセルできれいさっぱり浄化されてしまいます。
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 汚染物質の分離精製には成功したらしい。ISOから、海洋汚染解明&対策のリーダーに任命されて、張り切って研究したんでしょうけど、でも、忍者隊の使う装備の整備点検にもちゃんと気を配りましょうよ、博士。
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 海を死滅させた後の地球を征服したって、カッツェだって困るでしょうから、いずれどっかで浄化を考えるしかないでしょう。ということは、それまでは、カッツェと駆け引き=地球を人質にしたチキンレースを繰り広げるしかないわけですが、無公害エネルギーの開発を謳ったマントルプランの総責任者としては、立場上とてもそんなことはできなかったのでしょう。
 触角頭の跳ね具合も今一つ元気が無くてしょんぼりなのが、汚染浄化の対策無しの状況に追い込まれた南部博士の心情をそのまま現しているようです。こういう南部博士も、見ていて何だかかわいいんですけどねぇ。

 とりあえず、初代前半より。
 16話。メカニカの設計図を自分で作り直した南部博士、マイクロフィルムを入れたカセットを健に持って行かせます。作戦に成功して、見事にメカニカは遊園地に。その成果を、最後のシーンで、南部博士はわざわざ見に来ます。
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 完成具合を自分の目で見て、自己満足に浸っているとしか思えません。何だか、うっとり……という表情をしています。諸君から報告させれば、それで作戦終了のはずですが、どうしても自分の目で見たかったのでしょう。

 28話。見えない鉄獣を見えるようにする建物を完成させた南部博士。最後に、その姿を敵の前に現します。多分、本人はISOかどっかに居て、映像だけ送ってきたと思われます(姿が出ているのは、ドーム状の建物のかなり上なので、実物が出ようとしたら横になったような姿勢でないと出られません。
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 この時の台詞が、「ははははは、ようこそギャラクターの諸君、待っていたぞ」「さよう、私のかけた罠だ。君たちのためにわざわざこの城を造って待っていたのだ」です。南部博士、わざわざ自慢するためだけに出てきたようです。しかもこの罠、作中の時間経過から見て、かなり突貫工事で作った代物のはずです。それなのに、自分が出られるようにする機能を忘れずにつけておく南部博士、こだわり方が常人とは違います。もちろん、罠の動作具合は、きちんと双方向でモニターしていたに違いありません。

 42話。諸君が書き割りのセットで囚人達を騙して見事に元の刑務所に収容した後、警備員と一緒に出てきます。

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 このシーンでは、台詞は無いのですが、セットの製作などの指揮をとっていたのではないでしょうか。どう見ても、あのセットの製作は、諸君5人だけでこなせる作業量ではありませんでしたし。これも、南部博士が現場に来る必要は全くありません。諸君に報告させれば済む話です。警備員が銃を構えているわけで、丸腰の南部博士が突っ立ってたって何の役にも立ちません。かなり上の方の安全な所に居るから良いものの、下手すりゃ真っ先に囚人に人質にとられそうです。

 とまあ、こんな具合に、南部博士自らが何かを作った時は、必ず現場に戻ってその結果を確認しに来る癖があるようです。マニアックなこだわりなのか、単に物好きなのか、おちゃめなのか……誰ですか、「放火犯かよ!」って突っ込んでるのは(爆)。いや、まあ、案外似たような心理なのかもしれませんが。

 初代ガッチャマン20話。
 子犬を助けて爆発で飛んできた破片を頭に受けてしまうジョー。南部博士発案の遠心分離装置でも破片が取れず、諸君が出撃した後も寝かされていたのだけど、南部博士が目を離した隙に抜け出して出撃。諸君に向かって「ジョーは必ず助けて見せる」などと大口叩いておいて、あっさり逃げられた。
 慌てて、ゴッドフェニックスの通信装置に現れて、ジョーがそっちへ向かったと告げた時の姿がこれ。
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 心なしか作画の方にも普段の迫力が感じられず……何だか間抜けな表情で登場してます。

 次が、初代ガッチャマン103話。
 別荘に集合した諸君に出撃命令を出し、ジョーには残るように命じ、「ジョー、脳のレントゲンを撮る。診察室まで来たまえ」と言って部屋を出たとたんに車のエンジン音が。
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 慌てて部屋に引き返そうとする南部博士。
 部屋に駆け込んだ時には、既にジョーの姿はなく、窓からジョーが去っていくのを見送るしかありませんでした。
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 IIではジョーはサイボーグとなります。ドクターラッフェルが殺されてしまい、エネルギー補給ができず、IIの51話ではかなり体調が悪くなってしまいます。南部博士は何とかエネルギー補給の方法を見つけようとします。不調なジョーを南部博士のもとに残して諸君は出撃するのですが、南部博士は、またもやジョーに逃げられる。
 ニューゴッドフェニックスのモニター画面に現れて、ジョーが出て行ったことを告げる南部博士。
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 普段よりもアップで登場してます。よっぽど焦ったんでしょうか。

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大きなディスプレイからはみ出しそうなサイズで出てきています。そんなに迫らんでも……。

 ところで初代の20話は、宇宙科学研究所の遠心分離装置からの脱出、初代の103話は南部博士の別荘からの脱出ですから、おそらく両方とも地上にある建物からでしょう。ところが、IIの51話は、海底のGタウンからの脱出ですから、難易度がぐんと上がっています。体調が悪くてもそれをやってのけるジョー、初代の時に比べると、エスケープの腕前が確実に上がってきています。

 そしてFの2話。ジョーのサイボーグの体にエネルギー補給の方法の研究を続ける南部博士が、総裁Z出現の知らせに呼び出されて出て行き、戻ってみたらジョーが居ない。

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 あーどうしよう、って顔をしています。南部博士(この時は既にISO長官)が居たのは、ISO本部にある南部長官の研究室だと思われます。既に、南部博士の目を盗んで海底のGタウンから脱出する技を身に付けたジョーにとっては、ISO本部ビルからの脱出なんか、楽勝でしょう。
 ジョーが落としていったペンダントを拾いつつ、ジョーの安否を気遣う南部長官。哀愁が漂ってます。

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 でもね、南部博士、あなたジョーに逃げられたのはこれで4回目ですよ。
 こうなると、体調不良のジョーの観察を南部博士だけがしている、というのは、むしろ不安材料です。南部博士、他の仕事が忙しいのか、緊急連絡でしょっちゅう呼び出しがかかるのか、とにかく目を離した隙に必ずジョーが居なくなる。最初の1回は仕方無いとしても、4回も同じパターンでやられたのでは、ただの間抜けです。いや、ひょっとしたら、ジョーの方が、博士の抜けてる部分をしっかり把握していたということかもしれませんが。
 もうこうなったらいっそ、科学忍者ではなく、プリンセステンコーの襲名をしてはどうかとジョーに提案したくなってきます(違)。

 優秀な科学者なんだろうけど、学習能力があるのかないのか、ちょっとよくわからない南部博士です。

 初代53話「さらばレッドインパルス」より。ISOの会議場を封鎖し、一夜明けて、地球は救われたがレッドインパルスは犠牲になった、という報告を聞いて、通信機を握り締めて涙する南部博士。
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 まずもって公私混同はしない上に、困難なことになっても泣くキャラじゃない南部博士が唯一涙を見せたシーン。

「皆さん、科学忍者隊よりただ今連絡が入りました。地球は救われました。私の良き友達の犠牲によって」

 普段なら、冷徹な南部博士は「地球は救われました」までしか言わないだろうし、ISOに集まった人達に対して友人の話をしたって仕方が無いわけで、それでも思わず言わずにはいられなかったのだろう。
 この後、泣き出しそうな顔で涙を拭いながら、皆に背を向けて廊下を歩いていくシーンが続く。
 もうこれで、生きている限り南部博士はレッドインパルスのことを思い出すのだろうなあ、たとえ戦いが終わって幸せな日常が戻ってきても心に引っ掛かり続けるのだろうなあ、と思っていたのだが、Fでご本人もお亡くなりに(泣)。